いそべさとしのホームページ

僕の舞台技術学校日誌
6月(2009.6.3〜6.26)


21.6.3 劇場の音響設備
 「きょうのピッコロ」を見ている限り、大ホールでは仕込みが行われているはずなんだけど、授業日程表によると今日の使用ホールは「大ホール」。リハーサル風景を遠くから眺めるのかな、あるいは今日は音響の手直しだけなのかな…と思っていたら、やっぱり手違いだったよう。中ホールで、先生が一生懸命、絵を描きながらの授業となった。
 ただ、逆にスムーズに内容をこなせたし、理論的な背景もよく説明していただき、みんなから活発な質問や討論が出たのも正直なところ。また、中ホールの音響設備は大ホールよりも単純なため、逆に分かりやすかったというのも事実。与えられた条件の中で最大限の効果を発揮するのもまたスタッフの真骨頂。勉強になりますなあ〜。
授業メモ
[劇場の音響]
・劇場はそれ自体が音響装置であるという側面がある。建築面での音響技術を「建築音響技術」といい、アンプやスピーカーを使った「電気音響技術」と対になる概念。
・劇場の音響は仮設の音響と違い、さまざまな用途に対応できるように作られている。また、いい音がどの席でも均等に聴けるようにしてやる必要がある。
[スピーカー]
・プロセニアムの上にある「プロセニアムスピーカー」と、横にある「カラムスピーカー」が基本。これらを複数使って音の定位を調節。
・「バルコニースピーカー」は2階建てのホールのバルコニー下となる1階部分に音を届かせるためのもの。プロセニアムスピーカーと座席に届くまでのタイムラグが生じてしまうため、ディレイで時間差を調節する。
・巨大なドームなどでは、後方の客席の人にもちゃんと聞こえるように、若干音が出るのを遅らせた「ディレイスピーカー」を「ディレイタワー」という仮設の塔を建てて設置する。当然、口の動きと音が合わないが、これは光の速さと音の速さの違いによるため、仕方ない。
・その他、1列目の人のためだけの「ステージフロントスピーカー」や壁の「ウォールスピーカー」、背面の「リアスピーカー」などもある。ない劇場も多い。
・「ステージスピーカー」はモニターや特殊効果(舞台上の電話機が鳴るなど)に使われる。「ころがし」と言う。最近はワイヤレスのものも増えている。
[周辺機器]
・イコライザーには「グラフィックイコライザー(GEQ)」と「パラメトリックイコライザー(PQE)」がある。PQEには周波数をいじるつまみ、ブーストかカットか、その幅、の3つのつまみが1セットで、これが数セットある。いずれも音場(おんば)、空間の補正に使う。
・「コンプリミッター」は正確にはコンプレッサー・リミッターだが、原理が同じため、一緒に呼ばれることが多い。スピーカーやアンプを過大入力から守るもの。
・「ディレイ」は音を遅らせること。遅れた音は「ディレイ音」。「エコー」とはちょっと違う(このあたりの説明、私自身ぼんやりと分かっただけなので、この程度で)。
・「チャンネルディバイダー」はスピーカーユニットの対応する周波数ごとに音の信号を分けるもの。フルレンジのスピーカーの場合は中にネットワークという機械が入っており、アンプ1台でHiとLowを鳴らすことができる。しかし、バイアンプの場合は事前にチャンネルディバイダーで分けたうえで、それぞれにアンプをつないで音を鳴らせる。バイアンプの方が音がいいといわれる。
・最近はスピーカー専用のコントローラーや、1台で複数のスピーカーをコントロールできるデジタルミキシングエンジン(DME)など、ひとつの機材で様々な効果を発揮できるものが増えてきている。ただし、それぞれの機能が分かっていないと十分に使いこなせない。
[パワーアンプについて]
・劇場の音響特性によって調整が必要であるが、逆に言うと、同じ劇場で使う限りは毎回調整する必要は全くない。そのため、1度調整したらまず動かすことはなく、そもそも調整するつまみなどが無かったり、あってもペンチで動かす必要があったりする。
[マイクについて]
・マイクには電源がいらずシンプルな構造の「ダイナミック型」と、電源がいるが音の良い「コンデンサー型」がある。それぞれ用途が違うが、近年のコンデンサー型の進歩は著しい。
・コンデンサー型の電源は、「ファントム電源」といってミキサー側から送る(48V)。電池のものもある。
・マイクには指向性があり、大きく「単一指向性」「無指向性」「双指向性」があり、「単一指向性」は感度の低い方から「カーディオイド」「スーパーカーディオイド」「ハイパーカーディオイド」となる。「カーディオイド」とは心臓のこと。音を拾う範囲が心臓型のため、こういわれる。「無指向性」は、例えば方向が動く可能性の高いピンマイクなどに用いられる。「双指向性」はラジオ対談などに用いられたが、最近ではめったに使わなくった。
・マイクロフォンに音源を近づけると低域が強調される。またカラオケなどでマイクの風防部分を握る人がいるが、あれはハウリングを起こすもとなのでやめたほうがよい。
・有名なマイクとしては、シュアーSM58SM57。ゼンハイザーMD421MD441UMKE2。AKG C451C414。ソニーC38B。アムクロンPCC160など。

21.6.5 舞台照明の作り方T
 7月に行う合同実習の照明を例に照明プランの作り方や照明の流れを説明してゆく。基本的には先生の話を聞くスタイルではあるが、内容は完全に合同実習に即した実践的なものであり、非常に勉強になる。メモ自体は少ないが、これも内容を聞き入ってしまった(&資料が豊富)なためで、むしろ内容は濃かった。しかし、あと1カ月後にこんなことができるのかなと不安になったのも事実…。
 照明器具の実習は以前にもあったが(21.5.13 スポットライト・照明卓を触ってみよう!)、その時の勉強の内容を意外と忘れてしまっていることに正直びっくり。勉強不足もさることながら、正直なところ年齢による記銘力の低下も感じなくはない…。ただ、ストーリーの中で覚える記憶というのはあまり年齢に関係ないそうなので(心理学の知識)、なるべくいろんな事柄を関連づけて覚えていかないと、と改めて思った次第でありました。
授業メモ
[仕込み図など]
・照明仕込図には、ある程度の一般的な傾向はあるが、明確な決まりはない。人によって書き方が違う部分があるため、凡例(KEY)を書いておいてやることが必要。
・チャンネル表には、それぞれのチャンネルにどの照明器具が対応しているのかを書く。
・データ表には、舞台の流れ(きっかけ、Q)に対応した照明の内容が書いてある。時間はオーバーラップタイム(重なっている時間)を記入。
[照明の流れ]
・ライトオープン(L・O)とは、緞帳を上げたときに中の照明が付いている状態のこと。逆はダークオープン(D・O)。
・照明を変化させるときも、徐々に変化させるオーバーラップ(O・L)と、突然変化させるカットチェンジ(C・C)がある。
・「あふる」というのは順番に付け消しすること。ただし、完全に消すのではなく、一定のパーセントの中で上下させることが多い。今回はぎらぎらとした夏の暑さをこれで表現した。
[照明に色をつける]
・カラーフィルターには10番台から80番台まである。
10番台 P(ピンク)
20番台 R(レッド・赤)
30番台 A(アンバー←オレンジのこと)
40番台 Y(イエロー・黄色)
50番台 G(グリーン・緑)
60番台 BG(ブルーグリーン)
70番台 B(ブルー・青)
80番台 Pu(パープル・紫)
・ホリゾントに入れられる色の数には限度(ピッコロは4色)があるため、その中でうまく混ぜ合わせる必要がある。
・三原色を合わせると本当は白になるはずだが、実際にはならない。それは、それぞれのフィルターで透過率が違うため。
・色と光源の場所により、舞台上の役者の印象は全く変わってしまう。2つの光源を用いることにより、さらに複雑な効果を狙うこともできる。
[機器について]
・パーライトにはフォーカス棒が付いていない。
[その他]
・「間口」とは、正確には袖幕と袖幕の間の間隔。プロセミアムの幅とは一緒でない場合もあるので注意。

21.6.7 演劇学校 補講 BBC「この世はすべて舞台 第4回・第5回」
 インフルエンザで飛んでしまっていた補講も再開。
 第4回は中世聖史劇とコメディア・デラルテ。イギリスのヨークでは聖史劇が現代にも生き残っており、演出家と主役自身はすべて市民の手によっていまだに上演されているというのは驚き。というか、普通の一般市民が役者になり、さまざまな役を毎年こなしているというのは地域づくり・まちづくりの観点からも非常に興味深い。正直うらやましくもある。昔の日本でも農村歌舞伎というのが各地にあり、佐渡などは村の神社ごとに能舞台があったりして、一般庶民が芸能に携わるということが普通に行われていたのであるが、大半の地域でその伝統が途切れてしまったのが実際のところ。近代化が50年遅ければまた違った結果が出ていたのかもしれないが…。
 第5回はシェイクスピア。BBC制作ということで、「当然シェイクスピアは知っているでしょ」的な取り扱い。正直、現代であっても最も有名な劇作家であることは間違いないのであるが…。もうちょっと基礎知識も教えていただきたいところ。ただ、シェイクスピアの前にイギリスでは詩(ソネット)の流行があり、それによって英語が磨かれたことにより、シェイクスピアの聞かせる演劇が成り立ったという説には、確かに納得。やはり、演劇というのは豊かな文学や新しい言語表現といった素地(下部構造?)がないと、なかなか爆発しないのであろう。
 教会演劇の話にも関連して、先生が話された「悪を演じることの難しさ」は、自分自身は役者ではないのだが、なんとなく分かる気がする。美しいもの、善なるものを演じるのはたやすいが、絶対的な悪を演じるというのは実に難しい。そもそも絶対的な悪なんてものがあるわけもなく、しかし役としては(特定の視点から見た)対比も必要なわけで、どう演じるのか、そもそも演じられるのかも含めて、本当に大変な作業であろう。とはいえ、それを乗り越えるのも役者としての大きなステップの一つと先生もおっしゃっており、演劇学校の皆さんにはぜひ乗り越えていただきたいと思う今日この頃でありました。

21.6.9 鑑賞授業「Not About Nightingales 〜C監房棟の男たち」(県立ピッコロ劇団)
 ピッコロ劇団の鑑賞授業。本格的な演劇&ひさびさのピッコロ劇団ということで非常に楽しみにしていた。
 大ホールに入ると、見慣れた場所のはずが、そこには違った世界と違った空気が。舞台際まで行ってみると、小さいながらも大量の照明器具が仕込んであるのが分かる。そして、ブログにも乗っていた独特な引き出し箪笥。独特の演劇空間がそこに広がっていた。
 脚本も良く、役者も良く、演出も良かったが、何よりも良かったのは美術・照明・音響のスタッフワーク関係。とりわけ舞台美術は相当なこだわりが感じられる一方で、わざとらしい、厭味な部分を感じることがあまりなかった。まさにその場所に、昔からあるかのように、それぞれのものが収まっていたのは見事。右左で交互に芝居が行われるのだが、決して見にくいこともなかった。そして、その舞台を生かす照明や音響も見事。舞台技術学校生にとって非常に勉強になる演目であったとも言える。
 ちなみに、この後何人かの同級生から感想を聞いたが、共通する意見・共通しない意見、いずれも多くを聞くことができ、更にこの演劇に対する見方が深まった。私は演劇を見に行く時には基本的に一人なのだが、複数人で見て感想を言い合うのも楽しいし、勉強になるなあと改めて感じたのでありました。

21.6.10 舞台美術とは何ぞや
 舞台美術の大家である先生を招いての授業。知識を得る授業というよりは講演に近いかも。
 この日は授業は8時まで(通常は8時40分まで)。80歳を超えるお年のため体力が持たないのかなと思いきや、「実は仕込みがうまくいっていないので、今から劇場に戻らなければならなくなったので…」とのこと。腰から携帯電話をぶら下げ、全く老人ということを感じさせない人物であった。若い人に囲まれて日々新鮮な気持ちで仕事をしていたらいつまでも青春を過ごせるのかなと、そんな意味でも大変励みになったのでありました。
授業メモ
[舞台美術家としての歩みなど]
・京都の芸大に入ったが、同級生には家元の息子・娘などが多く、なんとなく落ちこぼれていた。そんな中で、劇団に入り、舞台美術にはまった。役者としては標準語がうまくできずだめだった(当時の演劇はNHKのアナウンサーのような標準語でするのが普通であった)。
・大学に通いつつ、京都の松竹の撮影所で無給で働いていた。それでは大変だろうと、撮影所の人からNHKを案内された。ちょうど、テレビ局を大阪で立ち上げるという時期であり、実験放送の扱いであった。
・NHKにおいてもテレビ局が次々と立ち上がり、少しでもテレビのできる人は次々に全国各地に転勤となった。自分にも名古屋に転勤の命令が出たが、奥さんが仕事の関係で地元から離れられなかったことから、NHKをやめ、在阪の民放テレビ局に移った。
・民放に移る際に「仕事に支障の出ない限りは、舞台の仕事なども受けても良い」という条件を出した。そのため、生活はテレビの仕事で賄いながら、好きな舞台の仕事は本当に好きなものだけに取り組むことができた。
・一般的に劇団というのはお金がなく、できるだけ節約の方向で舞台美術も考えなければならない。しかし、逆にそれが創意工夫につながる。
[裏方のあり方]
・裏方は個人主義ではできない。また強情な人もだめ。
・裏方は美術・照明・音響の間でのコミュニケーションも重要。舞台においては演出家が一番偉く、裏方は舞台づくりの相当後から加わることになる。そのため、3セクションがチームワークで演出家と対峙し、最大公約数を見つけていくことが必要である。
[舞台美術の歴史など]
・江戸時代には「立版古」といって、舞台の代表的な場面などをジオラマ風に見せるものがあった。舞台美術の原点であると考えている。
・伊藤嘉朔の「夜明け前」舞台(1930年代)は自然主義リアリズムの頂点である。妻籠にある本陣をわずか6間の中で表現している。ひさしに置いた石の影で時間経過を、手前の樹木に花をつけることで季節を表している。当時は一つの演目を1か月以上もやっていたことから手間暇をかけることができたということもある。

21.6.11 演劇学校本科授業 「劇的時間の創造」(見学)
 遠足の前から、本科の学生さんたちは3チームに分かれて演技を作っているということは知っていた。時間を見つけてはいろんな場所で練習しており、ぜひ彼らの成果を見たいと思い、見学させてもらった。同じく、技術学校から見学2名。
 前半はウォーミングアップも兼ねたゲームなど。「集団で歩く→合図で目を閉じる→○○さんの方を指さしてくださいとの指示」「だっこちゃん」「手つなぎおに」「人間チェーン」など。それぞれに「他人をよく見る・感じる」「呼吸をすぐに整える」「自分の行動を覚えておく」などの演劇的意味が付加されている。
 その後、3チームの発表。どれもよく練習された、素晴らしいものであった。時間もない中、正直、これほどのものを出してくるのはすごいと思う。チームの力もあるだろうとは思うが、やはり標準的なモティベーションの高さがあるのだろう。隣の照明志望の技術学校生は見ながら照明プランを考えていたと言っていたが、私はどちらかといえば舞台美術プランを考えていた。やはり美術コースなのだろうか。防備録的に書いておくと、「1曲目:草にうずもれた南米の遺跡(コパンとかのイメージ)。2か所ぐらいに遺跡の石造物が転がっている」「2曲目:これは神社の境内で決まり。夏まつりの夜の気だるい雰囲気」「3曲目:工場地帯のイメージ。イントレを無造作にくんで照明を横からバシバシ当てるのも面白いかも」
 発表会の後の、「10人で1チーム→一人ずつ舞台に出ていく→その際、喜び・悲しみ・怒りを順々に上げていく」トレーニングというのも非常に興味深かった。役者は舞台に登場するとき、必ず舞台の中に何か違ったものを持ち込まないといけない。出るときは必ず何かを残していかなければならない。確かに人が一人増えるというのは、実際にその場に大きなインパクトを与える出来事。日常では分かっていながら、舞台という世界ではついつい忘れがち。やはり、それを埋めるのは日々の訓練であり、メソードであり、自省なのであろう。
 演劇学校本科の授業は、知識を得るというよりは、自分(と社会)の再発見という側面が強いように感じた。もうちょっと若ければ、来年度は本科に通えばとっても楽しかっただろうなと思ったりもしたのでありました。

21.6.12 舞台機構の基本操作U
 舞台機構の中でも、今回は平台パズル。舞台技術学校の名物授業の一つらしい。市民劇団時代なら何なくやっただろうし、吹奏楽時代にもそれはそれで知識として知っていたのだが、正直すっかり忘れていた。しかし、わいわいとみんなで考えながら取り組むのは実に楽しい。社会人になるとこういう機会というのはめったにない。
 ちなみに、補足資料として配られた「尺貫法とは何や?」は実に面白く、ためになる読みもの。ホームページに載せてもよさそう。SIの話やメートル原器の話など、私もなぜか大好きな分野。とっておいて、今後もなにかと読み返しそうである。やはり、私は興味の方向が美術コース向きなのだろうか?あまり美術も日曜大工も得意ではないのだが…。
 終了後は交流会という名の飲み会。結局終電まで。一部のメンバーは始発まで飲んでいたそうで、なんとも。私も3日連続飲みでなければ参加したかもしれないが、さすがに体が付いていかず、ちょっと残念な気持ちも残しつつ帰宅。まあ、今後もそういう機会がしばしばありそうで、体力をつけておかなければと小さく決意をしたのでありました。
授業メモ
[平台・箱馬・馬足の基本]
・平台は舞台上に台などを組む時に使う木製の台。高さは4寸。3尺×6尺の「さぶろく」、6尺×6尺の「ろくろく」などが一般的。
・海外の平台は周囲の部分が鉄製の場合が多い。
・平台はセンターが分かるようになっている(印となる木目が出ている)。
・箱馬は平台の高さを高くするために使う箱。大きさは6寸×1尺×1尺1寸が一般的。この箱を使うことにより3種類の高さを作り出すことができるすぐれもの。
・馬足も台を高くするもの。高さは1尺7寸、2尺4寸のものがある。
・箱馬・馬足は中途半端な高さに見えるが、平台と組むと7寸刻みが作れるようになっている。これは日本人にとって最も歩きやすい階段の高さであり、今も公共の場所などでよく用いられている。
作りたい高さ 作り方
7寸 3寸角(角材)+平台4寸
1尺4寸(常足) 箱馬1尺+平台4寸
2尺1寸(中足) 馬足1尺7寸+平台4寸
2尺8寸(高足) 馬足2尺4寸+平台4寸
・箱馬の方向により、5寸刻みもできる。
作りたい高さ 作り方
1尺 箱馬6寸+平台4寸
1尺5寸 箱馬1尺1寸+平台4寸
[台の組み方]
・通常は四隅に箱馬などを置けばよいが、重い物(ティンパニなど)や動きの激しいもの(ドラムセットなど)を載せる場合は、ろくろくの真ん中に箱馬を置いてやることもある。
・さんきゅう(3尺×9尺)については、しなりがあるので、その中間地点に箱馬か馬足を置いてやる。
・基本は「センターから」「低いところから」組む。また極力単純になるように組む。あえてややこしいことは考えない。
・平台の持ち手の部分からずれて落ちないように注意。特に馬足。
・スロープを組む場合は、あえて箱馬をかまちから外す。
・馬足に相がけしている場合、つかみ金具は入れない。もともとしっかりとはまっており、バラシの手間を省くため。
[大道具さんの七つ道具]
・大道具が持っている金づちはナグリと言われる。たたく部分が四角く、片方がくぎ抜き。側面でも釘が打てる。これは舞台関係者だけが使う特殊なもの。(ハンズで買うと5千円以上する。)
・道具は尺貫法の世界だが、なぜか釘だけはインチに基づく長さを使っている。釘は通常、抜きやすいように若干頭を残して打つ。
・劇場の舞台の床には通常釘打ちをしても良い。床は消耗品の扱い。
・服装は黒、または紺が基本。靴も黒。黒一色の服は普通の店では意外とないため、大道具さんはユニクロやイオンを御用達にしている人が多い。

21.6.14 演劇学校 補講 BBC「この世はすべて舞台 第7回・第9回」
 本来は土曜日に行けばピッコロ5連続だったのだが、さすがに疲れてしまい、日曜日に。明らかに日曜日の方が参加者が少ないので見やすくはあるのだが、翌日から仕事という点がデメリット。
 第7回はコメディフランセーズとモリエール。全然本筋ではないが、フランスではもともと屋内テニスが流行しており数多くのテニスコートが建築されたものの、そのうち流行がすたれ、残ったテニスコートの建物が劇場として転用されたという話には納得。「テニスコートの誓い」とか、何か違和感があったが、当時の手軽な巨大屋内空間だったのであろう。
 第9回はドイツ演劇とメロドラマ。ドイツ演劇には(BBC制作だからか)かなり否定的な取り扱い。メロドラマに対してもなんとなく否定的かも。とはいえ、「19世紀は演劇を見に行く人が最も多かった幸福な時代」などというナレーションもあり、全く否定しているわけでもなさそうだが…。荒唐無稽であることの面白さというのは、映画やテレビにはない演劇独自のものであって、廃れることはあっても無くなることはないのだろう。
 先生の話の中で面白かったのは、演技や演出の近年の変化。昔は舞台に碁盤の目を書いて「どこどこに立て」と指示したり、セリフの抑揚や言い方を細かく指示する演出家がいたが、最近はその場その場で反応をするように求められることが多くなっているとのこと。スタニスラフスキーメソッドやアクターズスタジオの手法が広く紹介されるとともに、アメリカやイギリスなどの海外で演出技法を学んで帰ってきた人が多くなったからだろうとのこと。その一方で、ワークショップから舞台までたどり着くのが難しくなっているという指摘もさもありなん。型から入る世界もなくはないわけで、結局はいずれも程度問題なのであろうが…。
 さらに、自然な反応を求められるようになった大きな原因の一つが映画やテレビなど、映像での仕事を大半のプロの俳優が求められるようになったからではないかという話があった。確かに、市民劇団時代も初心者なりに感じていたのが、脚本を書いたり、演出をしていてもついつい映像を思い浮かべて、それに引っ張られてしまうということ。本科の次の課題である「CMづくり」もこのあたりにヒントがあるのかなあと、一人思ったりもしていたのでありました。

21.6.17 音響機材の基本操作T
 音響機材をケーブルで繋いでみましょう、という実習。5〜6人で一組となり、みんなで話し合いながら進めていく。舞台技術学校は22名なのだが、演劇学校本科・研究科から毎回数名の方が授業に出ておられるので、総数は25名程度となり、結局5班に分かれた。私の班は音響機材に慣れた人もおり、あまり自分が口を出す前にどんどん進んでしまったという気がする。それでもきちんと音が出ればやはりうれしいもの。音も心なしかクリアーで、「音響も楽しいかも」と思ってしまったり。
 自分たちの順番が来るまでは基本的に「おしゃべりタイム」。無駄といえば無駄だが、この先生は前から「お互いに交流を深めて仲良くなっておいてくださいね」とおっしゃっているので、半分意図的なのかなと思ったり。とはいえ、いつの間にか結構席が固定化されており、座っている場所を動かない限りはいつものメンバーだったり。ちなみに、私は前列右手一番隅(or1席分左)で定位置化。
 終了後はまたも飲み会。完全に定例化。いくら安い店ばかりとはいえそこそこかかるわけで、学生さんとか金銭的に大丈夫なのだろうか。私の方は、さすがにこの年になると金銭的につらいということはないものの、メタボの方がつらくなりつつある今日この頃なのでありました。
授業メモ
[7月の合同実習について]
・詳細は次回の授業で。舞台・照明・音響の3セクションをそれぞれ体験し、コース分けの参考としてもらう。
・タイトルは「真夏の一日」。SE→曲が4回繰り返される
・音響操作は2人1組の予定。
・Qは先生から出る。プランに時間(Time)が書いてあるが、これはあくまでも目安。実際の舞台でも、時間どおりではなくきっかけに合わせた操作となるため。
[その他]
・回線図を見ただけでミキサーのチャンネル数などが分かるようになっている。
・OUTはオス優先(ケーブルがメス)。
・OUT系統から先に組むと、INを組んでいる途中で早くチェックができる。
・デジタル出力は録音やダビングなどの時などに使うと便利。MDのタイトルまですべてコピーしてくれる。通常はアナログ出力を使う。

21.6.19 舞台照明概論
 概論ということで、舞台照明の大家の先生の講義で、完全な座学。私はこの年になって座学も結構大丈夫になってきたが、若い人の中には眠かった人も多かった模様。「休憩取りましょうか?」と先生が問いかけた時に、学生よりむしろ事務の方が強く同意されていたが、後ろから見ていてかなりコックリの人がいたのであろう。まあ、みんな仕事帰り・大学帰りなので、結構大目には見ていただいているようだが…。
 さて、内容であるが、私は市民劇団時代に「照明の人は概して理屈っぽい」という印象を持ったのだが、確かに今回の先生も結構理屈っぽかった。しかし、話を聞きながら自分なりにその場面を思い浮かべたりすると、なかなか面白かったり。ただ、こういう授業は興味と経験がある程度ないと厳しいだろうなあ…。まあ、概論というのは概してそういうものなのであるが。
 ちなみに、来週は水曜日が照明の操作実習プラン、金曜日が音響の操作実習プランで、7月1日からいよいよ舞台機構操作実習全3回。まだまだ実践的な技が身についていない中で果たして大丈夫かなと、明らかに覚えが悪くなった自分を自覚しつつ、多少不安になっているのでありました。
授業メモ
[舞台照明の定義]
・「舞台照明とは舞台上における、あらゆる光の効果をいう」
・国際照明学会には一般照明の部会と舞台照明の部会がある。そういう点では、舞台照明とは一般照明と対になる概念。
・一般照明の部会では、「コンピュータ操作の際にいちばん疲れない照明とはどのような照明か」ということが大きな議論となっている。舞台照明の方では、「新しい機材が次々に開発されているが次は何が出てくるのか」「調光卓が今後どう進化するのか」などが議論の中心。
・国によって規格が違うことも大きな問題となっていたが、結局統一できないということで結論が出ている。
・日本には照明家の団体として「日本照明家協会」があり、会員数約4千人。舞台部門とテレビ部門に分かれ、講習会や資格認定などを行っている。日本に照明家と言われる人は、この4千人を含め、全体で1万人程度ではないかと考えている。
[舞台照明の要素]
・舞台照明の要素として「視覚」「写実」「審美」「表現」の4つがあげられる。
・「視覚」は明るく照らすということ。ホールは建物の中にあるため、何らかの明かりがないと何も見えない。観客が舞台を見ることができるように明るく照らすというのが舞台照明の基本。
・四国に金丸座という古い劇場がある。一度実験でろうそくの明かりだけでどこまで見えるかやってみたが、無理だった。当時は昼間に公演を行っていたようである。
・明るくみせるだけでも、たとえばオーケストラの場合、全奏者が指揮者をちゃんと見ることができるように光の方向や分量を考える(「眼つぶし」になってはいけない)など、それなりの技術が必要。
・「写実」とは、時間・四季などを光で舞台上に再現すること。リアリズム。ト書きなどを手掛かりに光を作る。
・「審美」とは、対象物を美しくみせること。たとえば、地明かりであっても、生だけではなく薄いパープルと薄いブルーのフィルターを通すと白い服などが映えるようになる。宝塚などはこれを非常に重視している。
・「表現」とは、心理的表現を明かりで示すこと。さみしいシーンでガンガンに明かりをつけることはないし、明るいシーンでスポット1つのみというのもまずない。
[舞台照明とテレビジョン照明]
・舞台照明はお客さんにどうみせるかが重要だが、テレビ照明はテレビカメラの撮像管にいかに綺麗な画像を送ることができるかが重要。
・テレビカメラは絞りを絞れば絞るほど画像がきれいになるため、必然的に照明は非常に明るいものとなっていた。最近は撮像管の精度が上がり、以前ほどではなくなってきている。
・テレビにおいては「色温度」というものが重要。舞台では(テレビ出身者以外は)まず言わない。(←色温度の解説をWikipediaで見たが私には全く意味不明。興味のある方は、こちら。)
・テレビはこの色温度の関係で、ブルーは異常に美しく、逆に赤・オレンジは汚くなる傾向がある。そのため、舞台中継などでは多少色目を変えてやらないといけないこともある。
[演出と照明の関係など]
・舞台は演出家の「演出意図」を表現する場。照明家はそれを手助けするとともに、さらに膨らませてあげることが重要。
・照明の知識は演出家によって全く違うため、打ち合わせの際にそのあたりのことも気をつけておく必要がある。場合によっては照明サイドからどんどん突っ込んでいく必要がある。
・舞台美術、音響などとの横の連携も重要。
[その他]
・英語では、上手=Left、下手=Right。舞台にいる人から見てなので注意。
・ホリゾントはもともと漆喰の壁であった。お金もかかるため、今は大半が幕になっている。
・舞台袖に幕を使うのは日本ならでは。欧米はセットで組むことが多い。
・シーナリースペースというのはアクティングエリアとホリゾントとの間。ここに様々な大道具を置くことができる。最近はそこまで明確にしないことが増えてきている。
・昔は舞台技術・照明ともリアルなものが多かった。最近は予算がないことなどから、象徴的な舞台にして、照明で表現することが増えてきている。

21.6.20−21 演劇学校特別講義「朗読」 (欠席)
 舞台技術学校生は自由参加だったのだが、この2日間、「ういろう売り」の特別講義であった。私は出る気満々でテキストまで購入したのだが、土曜日は仕事、日曜日はプライベートの用事で全く出れなくなってしまった。ちなみに7月の技術学校向け特別講義も職場旅行で出れない…。なかなか土日2日間を空けるのは難しい…。
 ピッコロシアター公式ブログ「きょうのピッコロ」に様子が描かれていたので、リンクを張っておきます

21.6.24 舞台照明の作り方U
 事実上、7月当初からの舞台機構操作実習の説明。花道にソースフォーが4台転がっていたりとか、光を見る前からもかなり派手な印象。明らかに去年の「四季」よりも灯体の数が多いんですが…。ちなみにいつものメンバーの多くは3時ぐらいから来て仕込み(パッチング)のお手伝いをしていた模様。これは流石に社会人には難しい。
 今回は操作方法がメインなため、あまりメモをとる時間もなく、メモなしで覚えておけるほどの記憶力もなく。さらに照明の分野はネット上にあまり情報がなく調べなおしも難しいので、「授業メモ」も残念ながらあまりかけることがない…。
 ちなみにこの日はあまり調子が良くなく、いまいち遠くから眺めていた感あり。とはいえ、帰りにカレー鍋を食べたりしており、本当に調子が悪いわけでもなく、仕事のごたごたもあって単に気分が乗らなかっただけかも。ただ昔に比べたらだいぶ感情の起伏は小さくなってきた気はするので、うれしいような、さびしいような。やはり年のせいかなと思ったりしつつある、初夏の夜でありました。
授業メモ
・照明仕込図で灯体を結んでいる線を「コンモ線」と呼ぶ。これで結ばれた灯体は同一の回路につなぐ。
・1つのコンセントには2kwまで。さらに1回路あたり3kwまで。照明プランを作る際は、これが非常に重要になってくる。
・回路の番号には全体の通し番号(ディマーナンバー)と、サスごとの番号がある。どちらを控えていても、調光卓での作業は可能。
・チャンネルとこの回路を対応させていくのが「パッチング」。調光卓で行う。
・チャンネルごとの明かりをさらに混合させて、プリセットフェーダーに割り当てていく。(このあたり良く分からない…。)
・雷のシーンや花火のシーンではタッチスイッチを使って点滅させる。

21.6.26 音響機材の基本操作U
 今回も、7月当初からの舞台機構操作実習の説明。初めてフルで音楽を聴く。夜の音楽の暑苦しさと、朝の音楽の打って変わってのさわやかさが非常に好対照。あと気になったのは、1回目のSEの救急車の音。照明では反映させないようであるが、作曲者は当初どういう意図だったのであろうか…。
 今回も「授業メモ」はほとんどなし。というか、技術学校である以上、技術メインなので、毎回毎回大量に書ける方がおかしかったのかもしれない。 ということにしておこう。
 なお、7月の実習班が発表。狙ったかのようにとっても濃い人々と同じ班になってしまった。良くも悪くも各分野の経験者が多く、安心といえば安心だが、逆に積極的に動かないと何もしないままに終わってしまう危険性も。とはいえ、仕事の方も忙しくなってきており、早めに仕込みに行くのも難しいし…。とにかく乗り切ることを最優先に、自分なりにがんばるしかないなと決意しつつあるのでありました。
授業メモ
・フェイドイン、フェイドアウトは自分の中で早いパターンと遅いパターンを持っておき、演出家の指示によって「早い方のちょっと遅い感じ」などと調整するのがよい。
・カットアウトはフェーダーで行う。MDでポーズボタンを押すなどという方法も考えられるが、間違える危険性が高い。
・MDから音を出す場合は、Readyボタンを使う。突然再生した場合、音が出るまで若干の時間差が生じる。
・知らない間に音が出ている「スネークイン」、知らない間に消えている「スネークアウト」という手法もあり、ラジオや演劇ではよくつかわれる。基本はフェイドイン、フェイドアウトと同じだが、若干の技術がいる。
・ホリゾント幕の裏にスピーカーを置く場合、幕が音を吸ってしまい、こもった音になる。これをきっちりと客席に届かせるためには、GEQであえて固い音を作ってやる方法がある。そのため、舞台裏で聞いているととんでもない音が鳴っているときがある。
・カットイン、フェイドインなどを明確にするため、台本などに線グラフ風の書き込みを行うと分かりやすい。

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