授業メモ [劇場の音響] ・劇場はそれ自体が音響装置であるという側面がある。建築面での音響技術を「建築音響技術」といい、アンプやスピーカーを使った「電気音響技術」と対になる概念。 ・劇場の音響は仮設の音響と違い、さまざまな用途に対応できるように作られている。また、いい音がどの席でも均等に聴けるようにしてやる必要がある。 [スピーカー] ・プロセニアムの上にある「プロセニアムスピーカー」と、横にある「カラムスピーカー」が基本。これらを複数使って音の定位を調節。 ・「バルコニースピーカー」は2階建てのホールのバルコニー下となる1階部分に音を届かせるためのもの。プロセニアムスピーカーと座席に届くまでのタイムラグが生じてしまうため、ディレイで時間差を調節する。 ・巨大なドームなどでは、後方の客席の人にもちゃんと聞こえるように、若干音が出るのを遅らせた「ディレイスピーカー」を「ディレイタワー」という仮設の塔を建てて設置する。当然、口の動きと音が合わないが、これは光の速さと音の速さの違いによるため、仕方ない。 ・その他、1列目の人のためだけの「ステージフロントスピーカー」や壁の「ウォールスピーカー」、背面の「リアスピーカー」などもある。ない劇場も多い。 ・「ステージスピーカー」はモニターや特殊効果(舞台上の電話機が鳴るなど)に使われる。「ころがし」と言う。最近はワイヤレスのものも増えている。 [周辺機器] ・イコライザーには「グラフィックイコライザー(GEQ)」と「パラメトリックイコライザー(PQE)」がある。PQEには周波数をいじるつまみ、ブーストかカットか、その幅、の3つのつまみが1セットで、これが数セットある。いずれも音場(おんば)、空間の補正に使う。 ・「コンプリミッター」は正確にはコンプレッサー・リミッターだが、原理が同じため、一緒に呼ばれることが多い。スピーカーやアンプを過大入力から守るもの。 ・「ディレイ」は音を遅らせること。遅れた音は「ディレイ音」。「エコー」とはちょっと違う(このあたりの説明、私自身ぼんやりと分かっただけなので、この程度で)。 ・「チャンネルディバイダー」はスピーカーユニットの対応する周波数ごとに音の信号を分けるもの。フルレンジのスピーカーの場合は中にネットワークという機械が入っており、アンプ1台でHiとLowを鳴らすことができる。しかし、バイアンプの場合は事前にチャンネルディバイダーで分けたうえで、それぞれにアンプをつないで音を鳴らせる。バイアンプの方が音がいいといわれる。 ・最近はスピーカー専用のコントローラーや、1台で複数のスピーカーをコントロールできるデジタルミキシングエンジン(DME)など、ひとつの機材で様々な効果を発揮できるものが増えてきている。ただし、それぞれの機能が分かっていないと十分に使いこなせない。 [パワーアンプについて] ・劇場の音響特性によって調整が必要であるが、逆に言うと、同じ劇場で使う限りは毎回調整する必要は全くない。そのため、1度調整したらまず動かすことはなく、そもそも調整するつまみなどが無かったり、あってもペンチで動かす必要があったりする。 [マイクについて] ・マイクには電源がいらずシンプルな構造の「ダイナミック型」と、電源がいるが音の良い「コンデンサー型」がある。それぞれ用途が違うが、近年のコンデンサー型の進歩は著しい。 ・コンデンサー型の電源は、「ファントム電源」といってミキサー側から送る(48V)。電池のものもある。 ・マイクには指向性があり、大きく「単一指向性」「無指向性」「双指向性」があり、「単一指向性」は感度の低い方から「カーディオイド」「スーパーカーディオイド」「ハイパーカーディオイド」となる。「カーディオイド」とは心臓のこと。音を拾う範囲が心臓型のため、こういわれる。「無指向性」は、例えば方向が動く可能性の高いピンマイクなどに用いられる。「双指向性」はラジオ対談などに用いられたが、最近ではめったに使わなくった。 ・マイクロフォンに音源を近づけると低域が強調される。またカラオケなどでマイクの風防部分を握る人がいるが、あれはハウリングを起こすもとなのでやめたほうがよい。 ・有名なマイクとしては、シュアーSM58、SM57。ゼンハイザーMD421、MD441U、MKE2。AKG C451、C414。ソニーC38B。アムクロンPCC160など。 |
授業メモ [仕込み図など] ・照明仕込図には、ある程度の一般的な傾向はあるが、明確な決まりはない。人によって書き方が違う部分があるため、凡例(KEY)を書いておいてやることが必要。 ・チャンネル表には、それぞれのチャンネルにどの照明器具が対応しているのかを書く。 ・データ表には、舞台の流れ(きっかけ、Q)に対応した照明の内容が書いてある。時間はオーバーラップタイム(重なっている時間)を記入。 [照明の流れ] ・ライトオープン(L・O)とは、緞帳を上げたときに中の照明が付いている状態のこと。逆はダークオープン(D・O)。 ・照明を変化させるときも、徐々に変化させるオーバーラップ(O・L)と、突然変化させるカットチェンジ(C・C)がある。 ・「あふる」というのは順番に付け消しすること。ただし、完全に消すのではなく、一定のパーセントの中で上下させることが多い。今回はぎらぎらとした夏の暑さをこれで表現した。 [照明に色をつける] ・カラーフィルターには10番台から80番台まである。
・三原色を合わせると本当は白になるはずだが、実際にはならない。それは、それぞれのフィルターで透過率が違うため。 ・色と光源の場所により、舞台上の役者の印象は全く変わってしまう。2つの光源を用いることにより、さらに複雑な効果を狙うこともできる。 [機器について] ・パーライトにはフォーカス棒が付いていない。 [その他] ・「間口」とは、正確には袖幕と袖幕の間の間隔。プロセミアムの幅とは一緒でない場合もあるので注意。 |
授業メモ [舞台美術家としての歩みなど] ・京都の芸大に入ったが、同級生には家元の息子・娘などが多く、なんとなく落ちこぼれていた。そんな中で、劇団に入り、舞台美術にはまった。役者としては標準語がうまくできずだめだった(当時の演劇はNHKのアナウンサーのような標準語でするのが普通であった)。 ・大学に通いつつ、京都の松竹の撮影所で無給で働いていた。それでは大変だろうと、撮影所の人からNHKを案内された。ちょうど、テレビ局を大阪で立ち上げるという時期であり、実験放送の扱いであった。 ・NHKにおいてもテレビ局が次々と立ち上がり、少しでもテレビのできる人は次々に全国各地に転勤となった。自分にも名古屋に転勤の命令が出たが、奥さんが仕事の関係で地元から離れられなかったことから、NHKをやめ、在阪の民放テレビ局に移った。 ・民放に移る際に「仕事に支障の出ない限りは、舞台の仕事なども受けても良い」という条件を出した。そのため、生活はテレビの仕事で賄いながら、好きな舞台の仕事は本当に好きなものだけに取り組むことができた。 ・一般的に劇団というのはお金がなく、できるだけ節約の方向で舞台美術も考えなければならない。しかし、逆にそれが創意工夫につながる。 [裏方のあり方] ・裏方は個人主義ではできない。また強情な人もだめ。 ・裏方は美術・照明・音響の間でのコミュニケーションも重要。舞台においては演出家が一番偉く、裏方は舞台づくりの相当後から加わることになる。そのため、3セクションがチームワークで演出家と対峙し、最大公約数を見つけていくことが必要である。 [舞台美術の歴史など] ・江戸時代には「立版古」といって、舞台の代表的な場面などをジオラマ風に見せるものがあった。舞台美術の原点であると考えている。 ・伊藤嘉朔の「夜明け前」舞台(1930年代)は自然主義リアリズムの頂点である。妻籠にある本陣をわずか6間の中で表現している。ひさしに置いた石の影で時間経過を、手前の樹木に花をつけることで季節を表している。当時は一つの演目を1か月以上もやっていたことから手間暇をかけることができたということもある。 |
授業メモ [平台・箱馬・馬足の基本] ・平台は舞台上に台などを組む時に使う木製の台。高さは4寸。3尺×6尺の「さぶろく」、6尺×6尺の「ろくろく」などが一般的。 ・海外の平台は周囲の部分が鉄製の場合が多い。 ・平台はセンターが分かるようになっている(印となる木目が出ている)。 ・箱馬は平台の高さを高くするために使う箱。大きさは6寸×1尺×1尺1寸が一般的。この箱を使うことにより3種類の高さを作り出すことができるすぐれもの。 ・馬足も台を高くするもの。高さは1尺7寸、2尺4寸のものがある。 ・箱馬・馬足は中途半端な高さに見えるが、平台と組むと7寸刻みが作れるようになっている。これは日本人にとって最も歩きやすい階段の高さであり、今も公共の場所などでよく用いられている。
・通常は四隅に箱馬などを置けばよいが、重い物(ティンパニなど)や動きの激しいもの(ドラムセットなど)を載せる場合は、ろくろくの真ん中に箱馬を置いてやることもある。 ・さんきゅう(3尺×9尺)については、しなりがあるので、その中間地点に箱馬か馬足を置いてやる。 ・基本は「センターから」「低いところから」組む。また極力単純になるように組む。あえてややこしいことは考えない。 ・平台の持ち手の部分からずれて落ちないように注意。特に馬足。 ・スロープを組む場合は、あえて箱馬をかまちから外す。 ・馬足に相がけしている場合、つかみ金具は入れない。もともとしっかりとはまっており、バラシの手間を省くため。 [大道具さんの七つ道具] ・大道具が持っている金づちはナグリと言われる。たたく部分が四角く、片方がくぎ抜き。側面でも釘が打てる。これは舞台関係者だけが使う特殊なもの。(ハンズで買うと5千円以上する。) ・道具は尺貫法の世界だが、なぜか釘だけはインチに基づく長さを使っている。釘は通常、抜きやすいように若干頭を残して打つ。 ・劇場の舞台の床には通常釘打ちをしても良い。床は消耗品の扱い。 ・服装は黒、または紺が基本。靴も黒。黒一色の服は普通の店では意外とないため、大道具さんはユニクロやイオンを御用達にしている人が多い。 |
授業メモ [7月の合同実習について] ・詳細は次回の授業で。舞台・照明・音響の3セクションをそれぞれ体験し、コース分けの参考としてもらう。 ・タイトルは「真夏の一日」。SE→曲が4回繰り返される ・音響操作は2人1組の予定。 ・Qは先生から出る。プランに時間(Time)が書いてあるが、これはあくまでも目安。実際の舞台でも、時間どおりではなくきっかけに合わせた操作となるため。 [その他] ・回線図を見ただけでミキサーのチャンネル数などが分かるようになっている。 ・OUTはオス優先(ケーブルがメス)。 ・OUT系統から先に組むと、INを組んでいる途中で早くチェックができる。 ・デジタル出力は録音やダビングなどの時などに使うと便利。MDのタイトルまですべてコピーしてくれる。通常はアナログ出力を使う。 |
授業メモ [舞台照明の定義] ・「舞台照明とは舞台上における、あらゆる光の効果をいう」 ・国際照明学会には一般照明の部会と舞台照明の部会がある。そういう点では、舞台照明とは一般照明と対になる概念。 ・一般照明の部会では、「コンピュータ操作の際にいちばん疲れない照明とはどのような照明か」ということが大きな議論となっている。舞台照明の方では、「新しい機材が次々に開発されているが次は何が出てくるのか」「調光卓が今後どう進化するのか」などが議論の中心。 ・国によって規格が違うことも大きな問題となっていたが、結局統一できないということで結論が出ている。 ・日本には照明家の団体として「日本照明家協会」があり、会員数約4千人。舞台部門とテレビ部門に分かれ、講習会や資格認定などを行っている。日本に照明家と言われる人は、この4千人を含め、全体で1万人程度ではないかと考えている。 [舞台照明の要素] ・舞台照明の要素として「視覚」「写実」「審美」「表現」の4つがあげられる。 ・「視覚」は明るく照らすということ。ホールは建物の中にあるため、何らかの明かりがないと何も見えない。観客が舞台を見ることができるように明るく照らすというのが舞台照明の基本。 ・四国に金丸座という古い劇場がある。一度実験でろうそくの明かりだけでどこまで見えるかやってみたが、無理だった。当時は昼間に公演を行っていたようである。 ・明るくみせるだけでも、たとえばオーケストラの場合、全奏者が指揮者をちゃんと見ることができるように光の方向や分量を考える(「眼つぶし」になってはいけない)など、それなりの技術が必要。 ・「写実」とは、時間・四季などを光で舞台上に再現すること。リアリズム。ト書きなどを手掛かりに光を作る。 ・「審美」とは、対象物を美しくみせること。たとえば、地明かりであっても、生だけではなく薄いパープルと薄いブルーのフィルターを通すと白い服などが映えるようになる。宝塚などはこれを非常に重視している。 ・「表現」とは、心理的表現を明かりで示すこと。さみしいシーンでガンガンに明かりをつけることはないし、明るいシーンでスポット1つのみというのもまずない。 [舞台照明とテレビジョン照明] ・舞台照明はお客さんにどうみせるかが重要だが、テレビ照明はテレビカメラの撮像管にいかに綺麗な画像を送ることができるかが重要。 ・テレビカメラは絞りを絞れば絞るほど画像がきれいになるため、必然的に照明は非常に明るいものとなっていた。最近は撮像管の精度が上がり、以前ほどではなくなってきている。 ・テレビにおいては「色温度」というものが重要。舞台では(テレビ出身者以外は)まず言わない。(←色温度の解説をWikipediaで見たが私には全く意味不明。興味のある方は、こちら。) ・テレビはこの色温度の関係で、ブルーは異常に美しく、逆に赤・オレンジは汚くなる傾向がある。そのため、舞台中継などでは多少色目を変えてやらないといけないこともある。 [演出と照明の関係など] ・舞台は演出家の「演出意図」を表現する場。照明家はそれを手助けするとともに、さらに膨らませてあげることが重要。 ・照明の知識は演出家によって全く違うため、打ち合わせの際にそのあたりのことも気をつけておく必要がある。場合によっては照明サイドからどんどん突っ込んでいく必要がある。 ・舞台美術、音響などとの横の連携も重要。 [その他] ・英語では、上手=Left、下手=Right。舞台にいる人から見てなので注意。 ・ホリゾントはもともと漆喰の壁であった。お金もかかるため、今は大半が幕になっている。 ・舞台袖に幕を使うのは日本ならでは。欧米はセットで組むことが多い。 ・シーナリースペースというのはアクティングエリアとホリゾントとの間。ここに様々な大道具を置くことができる。最近はそこまで明確にしないことが増えてきている。 ・昔は舞台技術・照明ともリアルなものが多かった。最近は予算がないことなどから、象徴的な舞台にして、照明で表現することが増えてきている。 |
授業メモ ・照明仕込図で灯体を結んでいる線を「コンモ線」と呼ぶ。これで結ばれた灯体は同一の回路につなぐ。 ・1つのコンセントには2kwまで。さらに1回路あたり3kwまで。照明プランを作る際は、これが非常に重要になってくる。 ・回路の番号には全体の通し番号(ディマーナンバー)と、サスごとの番号がある。どちらを控えていても、調光卓での作業は可能。 ・チャンネルとこの回路を対応させていくのが「パッチング」。調光卓で行う。 ・チャンネルごとの明かりをさらに混合させて、プリセットフェーダーに割り当てていく。(このあたり良く分からない…。) ・雷のシーンや花火のシーンではタッチスイッチを使って点滅させる。 |
授業メモ ・フェイドイン、フェイドアウトは自分の中で早いパターンと遅いパターンを持っておき、演出家の指示によって「早い方のちょっと遅い感じ」などと調整するのがよい。 ・カットアウトはフェーダーで行う。MDでポーズボタンを押すなどという方法も考えられるが、間違える危険性が高い。 ・MDから音を出す場合は、Readyボタンを使う。突然再生した場合、音が出るまで若干の時間差が生じる。 ・知らない間に音が出ている「スネークイン」、知らない間に消えている「スネークアウト」という手法もあり、ラジオや演劇ではよくつかわれる。基本はフェイドイン、フェイドアウトと同じだが、若干の技術がいる。 ・ホリゾント幕の裏にスピーカーを置く場合、幕が音を吸ってしまい、こもった音になる。これをきっちりと客席に届かせるためには、GEQであえて固い音を作ってやる方法がある。そのため、舞台裏で聞いているととんでもない音が鳴っているときがある。 ・カットイン、フェイドインなどを明確にするため、台本などに線グラフ風の書き込みを行うと分かりやすい。 |