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僕の舞台技術学校日誌
7月(2009.7.1〜7.26)


21.7.1 舞台機構操作実習T(照明)
 いよいよ初の実習開始。3チームに分かれて、順番に3セクションを体験していく。私はC班(ゆかいな仲間たち班)で、照明→音響→美術の順番。今日は照明。いきなり難しいところにあたった気もする。
 とはいえ、仕込みの段階ですべて事前にパッチングと記憶がされており(先生&お手伝いしてくれた人ありがとう)、単に時間に合わせて「Go」ボタンを押す程度。フェーダー操作も客電の上げ下げぐらい。もしかすると、やること自体は3セクションの中で最も単純かも。それでも自分の操作で、大きな舞台の光が次々に変わっていくのは、ある種の怖さと楽しさがある。最初は時間や手順に追われてばかりであったが、徐々に曲と合わせる余裕も出てきた。
 最後はバラシ。実はこれが一番実践力が身につくかも。とはいえ、人間も多いのであっけないほどあっという間に終わる。やっぱり20数人の力ってすごいなあと、変なところで感心してしまったのでありました。
授業メモ(実習を受けている人以外には何の役にもたちませんので注意)
・資料は6月24日に配布されたものを使用。きっかけの時間やオーバーラップタイムに相当、変更あり(先生から指示がある)。
・「花火」はサブマスターフェーダーに入れてある。
・2人1組で実施。1人は「客電、Goボタン、(花火)」、もう一人は「時間の計測・指示、雷のピアノボタン、(花火)」といった分担。[分担はとっとと決めること!]途中で変わっても良い(が変わらない組の方が多かった)。
・一番忙しいのは、「雷→雨→音楽」のあたりの操作。以降は、すんなりと流れていく。
・舞台上の照明を暗転する前に作業灯を入れるのを忘れないこと。
・客電のフェーダーはゆっくりゆっくり。(一般的に初心者は早すぎる傾向にあるとのこと。)
・タイムウォッチも重要だが、曲にのって、曲に合わせた転換を心がけることができるとなお良い。

21.7.3 電気の基礎知識
 実習が始まったばかりではあるが、座学の授業。この授業は昔からあるらしい。たしかに、舞台というのは電気だらけなので、技術学校生としては基本的な知識は必要不可欠。
 オームの法則だの、単相3線式だのといっても正直ちんぷんかんぷんであるが、高電圧を使った方が効率的であるという話は面白かった。日本の家庭用は100Vであるが、エアコンなどでは200Vのものがあったり、韓国では政策的に200Vに変えたりしているらしい。とはいえ、100Vというのはアンペアとワットの関係が一目瞭然で間違えにくく、できればそのままにしておいてほしいものではあるが…。
 面白くないかな、眠いかなと思いきや、結構みんな熱心に、最後まで集中して聞いていた。質問も結構出て、みんな本当に意欲が高い。お互いのチームワークも高まってきていて、本当にいい感じだなとうれしい今日この頃でありました。
授業メモ
[電気の基礎]
・家の電球はどんなに明るくても100W以下。一方、スポットライトは通常1KWで、小さくても500W。全然容量が違うため、より慎重な取り扱いが求められる。
・通常、家庭の配電方式は「単相3線式」となっており、R・N・Tの三本の電線が通っている。N(ニュートラル)と結ぶと100Vの電源が取れる。RとTで結ぶと200V。
・電気による発熱を示した法則にジュールの法則があり、熱量(Q)=電流の2乗×抵抗×時間。電流(A)が大きいと発熱の割合が高まるため、電圧(V)を上げてやる必要がある。
[電気と安全]
・感電した場合、電気は通常、その場所から足を通って地面に流れる。右手から感電した時よりも、左手からの方が心臓を通るので危険。
・皮膚の抵抗は、発汗していると1/12、水にぬれていると1/25まで減少する。そのため、絶対にぬれた手で電気器具に触るのはやめた方がよい。
・舞台照明のコンセントなどにはアースが付いているものが多い。C型コンセントなど。
・T型コンセントは昔は250V以下であれば使えたが、いまは200V専用のコンセントとなっている。
・屋外設営の際など、漏電しているケースはかなりある。
・近年、持ち込み電気器具すべてについて漏電チェックをしているホールも増えてきている。
[配線部材]
・舞台では通常「キャプタイヤケーブル」を使う。通常家庭で使われるビニールコードやこたつなどに使われる袋打ちコードなどは引っ張りなどに弱いため、舞台では使用しないこと。
・キャプタイヤケーブルも容量によって太さ(導体面積)が変わってくる。ブレーカーよりも容量の大きいケーブルを使うこと。
・音響のノイズの原因となりやすいのが照明の電気コード。出力を調整するときに、どうしても入力側(1次側)の波形にも乱れが生じてしまうためこれを防ぐには、音響の電源と照明の電源を別々にとる、両者の電線は極力放して設置する(だめならクロスさせる)、絶縁トランスを利用する、一方のアース接続を動かしてみるなどの方法がある。
[その他]
・照明機器のデジタル制御信号としてDMX512信号があり、世界共通。一方、イーサネットを使ったネットワーク信号については各社ばらばらの状況。統一させようという動きもある。

21.7.4 実験劇場 off off vol.2 「動物園物語」
 特に鑑賞授業というわけでもないが、演劇学校&舞台技術学校コラボ企画として、ピッコロ劇団の二人芝居「動物園物語」を鑑賞。手作り感ある舞台であったが、役者はプロであり、長いセリフでもその長さを感じさせない。「得たと思ったものは失ったものだった」とは、なんとなく身に包まされる言葉。このセリフを語った役者さんもいろいろと経験があるそうで…。
 舞台的には中ホール&二人芝居なので特に凝ってはいないのだが、地明かりがきれいだった。ほのかにアンバーが入っており、芝居の雰囲気にあっている。ただ、衝撃的なシーンであえて青を使う必要があったのか、照明は淡々としていた方が逆に衝撃的だと思うのだが。あるいは正面からホワイトでパーライトとか。そのあたり「実験劇場」と銘打った割に、照明・音響・美術などはあまり実験的ではなかったのがちょっと残念。まあ、セリフの掛け合いがこの芝居の最大の魅力なので、裏方やり過ぎは良くないのも事実。
 終わった後に、舞台美術コースでいろいろとお世話になりそうなので、舞台監督さんに挨拶しておいた。トークショー司会ということで、浴衣の可愛らしい格好。ガチ袋とナグリを腰にぶら下げた舞台監督のイメージとは相当違うかも…。今回のトークショーは盛り上がりに欠けたとのことで、御苦労さまでした。僕も劇場側の人間として、もうちょっと質問を考えておけばよかったかなと思わなくもなかったのでありました。

21.7.4(その2) 演劇学校 補講 BBC「この世はすべて舞台 第12回・第13回」
 動物園物語終了が2時半すぎ。補講開始は6時。ということで、阪急塚口まで出てお昼を食べた後、塚口駅北側、県立塚口病院、上坂部西公園などを散歩。古本屋で安藤忠雄の建築写真集をつい購入。5時過ぎからはピッコロの資料室で前回見れなかった第10回を一人で鑑賞したり。
 第12回はミュージカル。初期ミュージカルの傑作「オクラホマ!」の出来の良さにびっくり。あきらかに以前の演劇とは一足とびの進歩があった感じがする。また、「コーラスライン」も紹介していたが、残念ながら私はこれを映画でも四季でも見たことがない。まだまだいっぱい見たいものがあるなあ…。とはいえ、このテレビシリーズはイギリスBBC制作なので、やはりアメリカには否定的。「演劇にリアリズムを導入した」とは評価していたが。
 第13回は最終回。総集編だが、やはりイギリス演劇万歳的な終わり方ではあった。そこで取り上げられたのが、アンダーグラウンドなものや不条理劇。このテレビシリーズは30年前のものなので、そのころは「こういう方向に演劇が進んでいくだろう」と思われていたとしても仕方ない部分がある。ただ、先生もおっしゃっていたが、30年後の今から振り返ってみると、やはりあの流れはファッションだったのかなという評価に終わってしまうだろう。歴史の寂しさ、厳しさでもあるが。
 さて次の時代、演劇はどういう方向に向かっていくのだろうか。私の高校・大学時代は、夢の遊眠社だの第三舞台だの新感線だのキャラメルボックスだのが注目を浴びていたが、小劇場の時代は正直終わってしまっている。劇団四季は相変わらず人気が高いが、会場も客層も、良くも悪くも成熟化。「静かな演劇」もいつのまにか静かに言われなくなってしまった。そして、演劇のひとつの大きな源流である高校演劇が最近、元気がないらしい。大きなムーブメントが起こる気配がないのである。
 私にとって演劇は趣味だが、ぜひ演劇学校・舞台学校から、そしてこの兵庫・関西から大きなムーブメントを起こす演劇人が育ってほしいと密かに祈ったりしていたのでありました。

21.7.8 舞台機構操作実習U(音響)
 今日は音響。C班は相変わらず全員参加。
 音響の実習自体は初めてだが、やはり曲や段取りには、明らかに全員が慣れてきており、きっかけのつかみ方も良くなってきた。照明も曲にあわせて変えているのがよく分かる。舞台は勢い余って落とし過ぎもあったが、まあまあいい感じ。先生方もだいぶリラックスしてきており、多少、遊びを入れたり。実習とはいえ、なかなか楽しくなってきた。
 音響では最初に音のレベルを自分で決められるのだが、これが人によって全く違うのでびっくり。私は明らかに小さく、次の女の子はかなり大きかった。吹奏楽・市民劇団と学園祭実行委員会という出身母体(?)の違いだろうか。また、たかがフェーダーの上げ下げといえども、自分の体の中の感覚や相方と無言のやり取りも必要で、それも意外であった。派手さはないもののマニアックな喜びが感じられそうな音響も、実は結構楽しいかもと思ってしまったのでありました。
授業メモ(実習を受けている人以外には何の役にもたちませんので注意)
・資料は6月26日に配布されたものを持ってきたらよいが、あまり使わない。
・基本は、「レベル合わせ」→「先生の指示に合わせてplayボタンを押す」→「SEなどはフェーダーで下げる」の繰り返し。単純だが、これがなかなか面白い。
・2人1組で実施。1人はM1、M2、SE3、SE4、もう一人はSE1、SE2、M3、M4といった分担。
・きっかけはすべて先生が出してくれるので、特段、難しい(あせる)ところもないかも。
・場合によっては、先生が若干高度なことを指示することも(SEに負けないようにMを出していくとか、Mを一気に上げずにSEが落ちるのに合わせて少しずつ上げていくとか)。
・自分の番が終われば、客席から見ていても良い。これが「音響担当」の一つの特権。場所によってかなり見え方・音が違うので、それを確かめてもいいかも。
・転換など重要なポイント以外はできるだけ舞台を見て、楽しみましょうとのお話あり。確かに自分の番はよく見れてなかったかも…。

21.7.10 舞台機構操作実習V(美術)
 3回のうち3回目は舞台美術。C班は8名中7名参加。
 美術といってもセッティングなどは済んでいるので、舞台機構操作がメイン。舞台監督や緞帳の上げ下ろし、吊物のアップダウン、スモークの操作など。私が明らかに好きな分野ではある。私自身は1回目にスモーク(ロスコ)、2回目に舞台監督を体験。1回目は先生が舞台監督をやったため、2回目が実質上の初めて。ちょっと上がってしまった部分もあるものの、おおむね順調に終えることができた。
 ということで、3コースを体験したわけだが、一番意外だったのは音響。なかなか面白い。照明も自分で操作している感はひしひしと感じられるものの、メカニカル的な部分が今一好きになれないかも。舞台は想定の範囲内だが、ここまで生徒自身が体験できる機会もまたなかなか無い。舞台美術の授業が17日にあるので、それを受けてから最終決定しようと、今だに揺れる思いの私なのでありました。
授業メモ(実習を受けている人以外には何の役にもたちませんので注意)
・生徒は「舞台監督」「操作板」「紗幕」「大黒幕」「スモーク」の5か所を担当。舞台監督の1回目は先生が行う。
・この日は「ドライアイス」を使用。お湯を沸かす機械があり、ここにドライアイスを突っ込んで煙を出す。ロスコ(スモークマシン)と異なり、空気よりも重いので下に溜まる。
・きっかけは舞台監督から出る。舞台監督は全体の流れ・きっかけを十分に理解しておく必要がある。
・1分前に「1分前です」、10秒前に「まもなくです」と声をかける。
・幕が降り切っているかどうかは、ちゃんと目で確認した後、インカムで各所に知らせる。
・音響、照明、舞台は密接につながっているので、1か所を体験していても他セクションのことも気にしておくこと。

21.7.11−12 舞台技術学校特別講義「音の話 音響効果の基礎」 (欠席)
 舞台技術学校生の必修授業だったのだが、職場旅行のため欠席。具体的な現場の話が多かったようなので、残念。
 あとから資料と、同級生の子から授業メモも貸してもらったが、正直ピンとこない。やはり技術の話はその場で聞かないと分からないのだろう。次回以降の特別講義にはぜひ出席したいと決意したのでありました。
授業メモ(貸していただいたメモから、自分が書きとめておきたい部分のみ)
・現在の音響、デジタル化しているといっているが、人が関わる以上、そんなに進歩していない。
・人間の耳、16歳で完成。21歳でMax。それ以降は退化する。
・人の耳は水平の音方向には鋭く、垂直方向には鈍い。真上・真下の音はほぼ判別不可能。
・オケピは客には聞きやすいが、舞台では聞きにくい。マイクを仕込んで、返しのみに使う。
・人一人は毛布1枚分の吸音。
・現代劇でリアルな街の音を使うことは少ない。→リアルの音と混在してしまう。身近な音は避ける。
・ME、SEの効果「1 場所の表現・状況」「2 季節・時間を表現」「3 心理的表現」「4 鳴らないといけない音(銃声、電話)」

21.7.15 クラッシックコンサートに向けて
 1週間後のクラッシックコンサートに向けてということで、照明の話。クラッシックコンサートの場合は照明は裏方の裏方に回る。ただ、目に負担がかからないことなど、クラッシックコンサート特有の注意すべきところもあるとのこと。なるほど、自分は昔演奏する立場であったが、「よくこんなに影が出ないように照明がセットできるなあ」といつも感心していたが、やはりそれなりの工夫がある模様。
 その後はシューティングの実際。3台ぐらいで奇麗に舞台が照らされていく。いとも簡単にされるが、あれほどになるのには長い経験が必要なのであろう。3分野の中でも特に照明は職人的要素が大きいなあと感じてしまったのでありました。
授業メモ
・反射板を使う場合、反射板に直接明かりが当たらないようにしつつ、ステージ全体(特に両端)を照らすことが必要。中央部分は明るくなりがちだし、そうでなくても人間の目の錯覚で明るく見える。
・人間の目はかなりの部分を主観で合わせてくれるが、カメラのCCDは厳密なため、カメラ撮影する場合などはちゃんと照度計でそれぞれの場所の明るさが違っていないか確認してやる必要性がある。
・反射板にもともと付いているライトは、シューティングなどの面から使えないことが多い。
・音響反射板はホールの大きさや用途、建設時の予算などによりさまざまな種類のものがある。ピッコロは天反と正反各1枚がバトンに吊られている。他には芸文センターのようにじゃばら型のもの、いずみの森ホールのように迫りになっているものなど。
・オケの照明の場合、各奏者と指揮者を結ぶ視線の延長線上に光源がないようにする必要がある。
・リサイタルの照明の場合、楽器によってそれぞれ注意すべき事柄がある。たとえば、バイオリンの場合影ができるのを防ぐため右頬にライトを当てる、独奏の場合は動き回るアクティングエリアを事前に把握しておく必要があるなど。また、ピアノの場合、鍵盤を真上から照らすのを好む人、たくさんのライトで影を消すことを好む人など、演奏者個人の好みもある。
・絞り込んでいるものは、舞台上からスポットライトを見ると大きな光源が見える。狭い範囲に強い光があたっている。
・一方、絞っていないものは、小さな光源が見える。舞台上から光源を見ていれば、同じ明るさかどうかがある程度見当がつく。
・現代劇でリアルな街の音を使うことは少ない。→リアルの音と混在してしまう。身近な音は避ける。
・昔はフィラメントの形がそのまま明かりに出たが、最近は改良され、ほとんど光むらも出ないようになった。
・新国立劇場では、ソースフォーを大型化したような照明器具であるニートハマーを多用している。
・ヨーロッパの劇場ではレパートリー制度がとられており、照明も仕込み図で細かく位置や絞り、角度などが指定されている。それを毎回設定していく専門職がいるほか、劇場内に工房もあり、簡単な照明器具であれば自作できる設備が整っている。

21.7.17 舞台美術のできるまで
 実は舞台美術最初の授業。これまで美術関係はどちらかといえば舞台装置や大道具の話であった。ということで、初の美術であるが、やはり美術は技術というよりは創造の世界。楽しいのは楽しいのだが、技術を身に着けるというのとはかなり違う世界であるように感じた。
 とはいえ、先生自身ものりのりの授業であり、こういう作業が楽しいのは非常によく分かる。いまさら技術を身につけても使う場面がないのも実態であり、1年間、楽しく刺激的な時間を過ごしてみますかねと思ってみたりもしたのでありました。
授業メモ
・舞台美術の依頼はだいたい電話で来る。その際「作品名、演出家、日時、劇場」が示される。日時(スケジュール)があうのは大前提。脚本はまだ書いている途中ということも多いので、演出家と合うかどうかは重要なポイント。
・脚本からは作品の本質を探り出すほか、時代背景や周囲の様子などをとらえる。ト書きのみならず、セリフの中にも重要なポイントが示されていることがある。
・知らない劇場の場合は必ず事前に下見をすることが必要。基本的な平面図などは持っていても、その劇場の持つ空気というものがあり、空間を作り上げていくうえで無視できない。
・「顔合わせ」はスタッフ・役者の全員が集合する重要な場。そこで、全員の自己紹介があった後、演出家が演出プラン(意図)を語る。演出家が一番最初に発した言葉というのは非常にヒントになるため、十分にメモをとる。その中で疑問に思ったこともメモしていき、質問する。読み合わせ終了後、スタッフ会議がある場合もある。
・美術家は顔合わせが終わるとすぐに仕事に取り掛かる必要がある。美術プランが決まらないと、立ち稽古もできず、照明や音響もプランが始められないため。
・ラフスケッチを描き、演出家のOKがでれば、エレベーション、平面図、模型などを作る。模型は紙で作った白模型が多いが、質感が重要な場合などはしっかりと作ることもある。
・その後、道具帳を作り、大道具会社に発注。仕込みの3週間前までには発注を終了する必要がある。
・具体の仕込みは舞台監督の仕事になるが、美術家はちゃんと想像どおりになっているか、確認する必要がある。また、光などに合わせて手直しをすることも多い。
・場当たり、舞台稽古、ゲネプロにおいては、美術家は客席にいてすべてをチェック。本番の幕が開くと同時に作業も権限も舞台監督に移るため、美術家としての仕事は終わる。
・舞台装置一式は「1杯」「2杯」と数える。
・床面や木の葉っぱなどは非常にお金がかかる。

21.7.18 鑑賞授業「ピッコロファミリー狂言会」
 鑑賞授業として、狂言を拝見。狂言を見るのは、おそらく高校時代以来。高校の卒業生に狂言の家元がいて、そのため新講堂のこけらおとしで狂言をしたはず。ちなみに、高校の新講堂には当時の高校としてはかなり本格的な舞台装置があり、さらに音楽部がそこを根城として活動していたため、そのあたりから劇場・ホール好きが始まったのかもしれない。
 で、簡単な解説の後、「蚊相撲」「水掛智」という2題を見たのだが…正直言うと、私自身はあまり面白いと感じなかった。確かに狂言独特の言い回しや滑稽な姿は興味深いのだが、それと伝統文化の格式がミスマッチというか…。様式美というには内容が面白すぎ、内容が面白い割には様式が硬かったり。まあ、このあたりは絶妙なバランスなので、これが心にぴったりとくる人もあるのであろう。
 ちなみに、一の松・二の松・三の松が遠近法で大きさを違えていたり、幕口から登場するときに密かに上手フロントライトを当てていたりと、舞台技術的な楽しみ方も。そういう意味では、どんな演目でも楽しめるようになったなあと再確認したのでありました。

21.7.18(その2) 演劇学校 補講 「ミュージカル ピピン」
 鑑賞授業終了が3時半すぎ。補講開始は6時。ということで、阪急塚口まで出て、ドトールで同級生とうだうだとおしゃべり。アイスハニーカフェ・オレ甘過ぎるよねとか、盛り上がってみたり。うーん、大学生みたいだなあ。
 BBCのシリーズが終わり、今回はミュージカル「ピピン」の鑑賞。ボブ・フォッシーの斬新な演出と振り付けで有名になった演目とのこと。簡単に言うと、「本当の自分探し」チックなお話。ここがまとまっているかも。
 正直なところ、今回の演目は私は大好き。集団による派手なダンス、渋くてキレのある男優、美しい歌、演劇でしかできない荒唐無稽な場面設定、分かりやすいベタなストーリーと、その裏にあるちょっと高尚チックなメッセージ。完全に壷にはまった。というか、たぶん、自分はミュージカル的なものが好きなのであろう。舞台学校に通って3カ月、だんだんそれがわかってきた。
 ちなみに進行役(リーディングプレーヤー)の男性がダンサブルで非常にかっこいいのだが、日本公演の時はパパイヤ鈴木さんがやったとか。なるほど、はまり役かも。私も役者だったらあんな役をやってみたいなと思いつつ、とても体が付いてこないなあとも思う今日このごろでありました。

21.7.22 クラッシックコンサート実習
 事実上、1学期最後の授業。反響板を下ろしてのクラシックコンサート実習。独奏者はいつも事務にいらっしゃるKさん。その素晴らしい経歴ときらびやかなお姿、そして力強い歌声にはびっくり。やっぱりピッコロにはいろいろとすごい人がいますねぇ。
 実習自体は若干高度すぎ、生徒が手を出せる部分は少なかったが、雰囲気ぐらいは体感できた気がした。クラッシックコンサート自体は人生の中で数限りなく体験したが、進行や照明、音響という観点で見たことはほとんどなかった。そういう意味では大変参考になり、今後、クラッシックコンサートを見る際にも見方が変わるかなと思ったり。
 ちなみに、もう1日、金曜日に鑑賞授業があるが、実際に集まって何か行うのは今日が最後。2学期からはコースごとに分かれての授業となるため、技術全員で一つの授業を受けるのも今日が最後。ということで、いつもの笑笑で打ち上げ。普段あまり一緒に行かない人も含めての大宴会。オタク的なネタから、5マタ・10マタかけてますみたいな恋愛話、コース選定結局どうしようかとか、舞台で生きていくにはどうしたらよいかという話まで、まさに百花繚乱。コースが分かれてもまた折々に技術全体で飲み会をしたいよね、と思ったりもしたのでありました。
授業メモ
・ピアノは大変音域が広い楽器のため、録音するには、マイクも2〜3本でそれぞれ高・中・低音域を狙う。
・最近、PCで録音して音質やリバーブなどを調整してやることが多い。ひずみのない音さえ拾っておければ、何とでも調整可能。ただ、原理自体はミキサーやエフェクタ―を使って調整してやるのと一緒。
・サスの明かりは顔を照らすのではなく、立体感を出すための明かり。
・ピアノの明かりは鍵盤全体に当たるように絞りの大きさを調節。
・天反を組んだら緞帳が使えないホールも多い。
・音響反射板は客席との一体感を出すために、客席の内装と近い感じで作られていることが多い。また、プロセミアムを反響板の位置まで可動(下降)できるホールもある。
・演劇では残響時間は短い方がよいが、クラッシックコンサートでは2秒以上などといわれる。そのため、ホールによっては残響時間を調整する機構を有するところがある。

21.7.24 鑑賞授業 朗読劇「あの夏、少年はいた」
 正課としては1学期最後の授業。同級生Kさんが大好きな劇団昴の朗読劇。ということで、期待していたのであるが、この日は久々に仕事が長引いてしまい、開園から1時間弱遅れての参加。これじゃ分からないかなと思いつつも、どうも話が盛り上がる直前だったらしく、非常にテンポよく見ることができた。
 この演劇は「朗読劇」と銘打っているとおり、脚本の美しい日本語とそれを支えられる役者、これに尽きる。なんせ、話される日本語が美しい。ワープロ時代の私たち、ネット時代の次の世代の人間では、あそこまでの文章はなかなか書けない気がする。そして、原作・脚本の素晴らしさに加え、それを話す俳優の力量も素晴らしい。途中からであったため、残念ながら話の筋自体に感激することはできなかったが、日本語っていい言葉だね、日本の夏を示すにはやはり日本語だよねと、その美しさは堪能できた。
 終了後、いつものタントで海老のトマトソースを堪能したのち、これから夜行バスで実家に帰るAさんを見送りに三宮のバスターミナルへ。何年か先、彼女が自分の町でプロになっていて、そこに旅行がてら訪ねて行けたりしたらそれはそれで楽しいかなと、遠い日のことを夢見てしまったのでありました。

21.7.24(その2) 進路希望調査を提出
 舞台技術学校は2学期から美術・照明・音響コースに分かれることになるので、その希望調査が7月31日締め切りで行われていた。多少迷ったものの、結局、美術コースで提出。今年は美術コースが多そうで、もしかしたら調整があるかもしれないし、人数が多すぎると濃い密度で学べない危険性もあるものの、いまさら自分の希望を変えるのも嫌なので…。
 いずれにせよ、9月早々は仕事で出席できず、さらに9月中旬にはポーランドに行ってしまうので、また何回か欠席になってしまう。1学期はともかく2学期に休むのはしんどいなあと思いつつも、ある程度そのあたりは覚悟してやっていかないと仕方ないんだろうなあとも思う、今日この頃なのでありました。
希望理由
 1学期、さまざまな分野を体験する中で、最も浅く広く演劇や舞台芸術全体を知り考えることができるのは美術コースであり、技能を身につけるというよりもむしろ、演劇や舞台に関する幅広い知識を得たい私にとってはこのコース選択がもっとも適切ではないかと考えました。
 また、私の場合、舞台進行や大道具の知識は現在の仕事であるイベント運営にも直接的間接的に生かすことができるのではないかと考えています。
 これらの理由により美術コースを第一希望とさせていただきました。

21.7.26 演劇学校 補講 「ハムレット」
 ピーター・ブルックという現代演劇の巨匠が演出した「ハムレット」とのこと。ハムレットはアフリカ系、オフィーリアはインド系、他にも日本人が出てきたりと、若干不思議な感じ。舞台装置も簡素なのか、不思議系なのか、中途半端。
 今回、久しぶりにシェイクスピアの作品をきっちりと見たが、今回の演出に関して言えば正直面白さを感じなかった。というか、シェイクスピアはやられ過ぎており、多少突飛なことをしないと注目を浴びないという難しさがあるのかもしれない。台本にとっては不幸なことなのかもしれない。
 正直なところ、今回は私は全然だめであった。どう考えてもあれではデンマーク王室の話ではないだろうと、ついつい突っ込みたくなる。演劇の本質に「扮する」ことがあると聞いたが、全然扮していない。宮廷のお話なんだからそれっぽくやってよ、ハムレットは宮廷育ちの“もやしっこ”だからこそいいのに、とかどうしてもベタな演出にこだわってしまうのでありました。

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