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上海万博の感想

「2日に1回日記」から


いまは夢みよう まだまだ夢みよう(上海万博感想1)
 上海万博から帰ってきました。5月2日に初入場し、あまりの人の多さと会場の広さにびっくり。上海にいる全部の期間万博に行かないと、とても全体像はつかめないと決心し、結局、5月2日から6日までの5日間万博に通いました。意外と入場者数が伸びなかったのもあって、中国館・日本館などの人気パビリオンをはじめ、ほぼ全体をまんべんなく見ることができたのではないかと思います。
 個別のパビリオンの感想などはまたまとめますが、全体としての感想は「この国には夢があるなあ」ということ。あるパビリオンでは、2030年の社会を想定した映画を流していました。その中で繰り広げられた2030年の上海の姿というのは、空中を車が飛びまわったり、変幻自在に形の変わる楽器があったり、何もない空間に突然モニターが現れたりと、夢色・薔薇色の未来でした。昨今の日本人から見ると荒唐無稽で、子ども向きでもなかなかあそこまでは作らないかなと思います。
 ただ、20年前の中国の状況からみると、今、2010年の中国・上海の姿はまさに夢物語。こうして夢が実現してしまった以上、次の20年も同様に発展していくという確信を持つのは、良く分かる気もします。中国には格差の問題もあるし、先進国との所得水準の差もあるし、政治的な問題も多いけど、世の中は確実にいい方向に向かっている。そんな中国の人々の夢と希望と確信がしっかりと感じられたのです。
 日本は物質的には豊かな国となりましたが、子ども達からは将来に対する具体的な夢が無くなり、若者には仕事がなく次の生活への展望が見えず、老人は社会から見捨てられることを恐れています。日本にもまだまだ解決しなければいけない問題はたくさんあります。「もう夢見るのはいいや」とうそぶくのではなく、「まだまだ社会は発展できる。夢を実現しよう」と、一人ひとりが努力していく姿勢が日本の社会にも求められているのではないか。改めてそんなことを考えました。
 これからも夢の実現のために、がんばれ中国!そして、日本もまだまだ負けないぞ!(2010/5/7)

志願者格差(上海万博感想2)
 上海万博には数多くのボランティアさんがいました。ボランティアは中国語で「志願者」。なんとなく硬いイメージがありますが、事実、上海万博のボランティアになるにはかなりのセレクションがなされているようです。
 それを一番感じたのが、中国国家館のボランティア。制服も立ち姿もきちっとしているだけでなく、女の子は可愛く、男の子はかっこいい。説明もさっぱりかつ適切な雰囲気で、日本人と分かると英語で話しかけてくれる。で、よくよく見ると、胸には「復旦大学」「上海交通大学」など超難関大学のバッチが。さらに国章入りのバッチをつけている人も。ボランティアであっても、エリートさんなのです。その後、気をつけて見ていくと、中国国家館の次が、テーマ館や会場内案内所のボランティア、各国パビリオン、企業パビリオン、入口、会場内、会場外案内所、会場外の交通整理…と、ボランティア間で、制服も役割も明確な格差があるようでした。
 ちょっとネットを調べてみると、ボランティア活動の階級式管理モデルなんて言葉も出てきて、階級闘争を国是とする国家としてちょっとどうなのかという気がしなくもありません。もちろん、良くも悪くも大量の人間を裁くにはそれなりの権限と役割の分担、差別化を図らなくてはいけないのも事実なのですが、さてここまであからさまにするのが良いのかどうか、日本人の感覚からは多少疑問に感じます。まあ、エリートがエリートとしての自覚と覚悟(とそれなりの報酬)を持つことが難しい日本という国も、ある意味、問題なんですけどね。
 しかし、あくまで個人的な感想ですが、20代前半の頭のいい女の子って、ああも「私って頭がいいのよ」という独特のオーラを出しているんでしょうねぇ。そのあたりは日本も中国も変わりません。まあ、彼女たちがそうやって生きていかざるを得ない何かがあるのかもしれませんが…。(2010/5/9)

最後はやっぱり(上海万博感想3)
 私の万博通いは「筑波科学万博(1985)」からなのですが、最も感動したのが全天周型立体映像だった富士通の「ザ・ユニバース」。赤青のメガネをかけての白黒映像だったのですが、特にDNAの分子レベルから染色体、細胞、人体へとつながっていくシーンは「本で読んでいたのは、なるほどこういうことだったのか」と心から納得できました。今でも音楽と共にあのシーンを思い出せます。もう一方で良かったのが、「燦鳥館(サントリー館)」。巨大なスクリーンを使って、渡り鳥の1年間を鳥の目で追っていました。美しい音楽と美しい映像がとても印象的でした。富士通館とサントリー館が、私の筑波科学万博の中で2大パビリオンだったのです。
 その後、花の万博(1990)、愛知万博(2005)と、この立体映像(全天周映像)・巨大映像の流れが続いてきた気がします。立体映像(全天周映像)としては、「ザ・ユニバースU(花博・富士通)」「三菱未来館(花博)」→「地球の部屋(愛知・長久手日本館)」、巨大映像としては、「日立グループ館(花博)」→「ブルーホール(愛知・ソニー)」「オレンジホール(愛知・NHK)」と言った流れです。
 今回の上海万博(2010)でもその流れは続いており、立体映像、全天周映像、巨大映像は花盛りでした。ただ、映画館で普通に3D映画が見れる時代、多少画面が飛び出るぐらいでは誰もびっくりしてくれないので、突然雨を降らせてみたり、椅子自体が連動して動くようになっていたりと、いろいろと工夫を凝らしていました。
 その中で意外に多かったのが「映像と人間のコラボレーション」。映像の中に出てきた機材や人が、スクリーンが上がると実際にそこにいて演技をしたりダンスをしたりする。このパターンが結構多かったのです(大韓民国館や日本政府館、上海館、上汽集団−GM館など)。やはり映像と違って、生身の人間というのはそれだけで人を引き付ける何かがあるのです。
 この「生身の人間を出す」という流れ、実は愛知万博でも会期中に3千回近い公演を行った「瀬戸日本館」や「長久手愛知県館」などがありました。いくら映像にリアリティや迫力が増しても、最後に最も印象的なのはやはり生身の人による演技なのかなと、改めて感じたのでありました。(2010/5/11)



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