全国中央駅めぐり・その10 (JR西日本おおさか東線) −揺れるものづくりの町の中央駅− 貨物線を旅客線化したJR西日本「おおさか東線」。これまで公共交通の便が悪かったところを結んでおり、新たな需要の創出が期待されています。中でも地下鉄との結節点が、この「高井田中央駅」。ところが、乗り換え先の地下鉄駅の名前は「高井田駅」。同じ場所にあるにもかかわらず違う駅名というのには、当然訳があるのです…。西日本屈指のものづくりの町の中央駅を訪ねてみました。(2009年5月・8月訪問、2009年8月掲載) | ![]() |
駅の所在地:大阪府東大阪市川俣一丁目 | 駅周辺の基本情報(見える範囲で) | |||
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デパート | スーパー | |||
コンビニ | 郵便局 | |||
バスターミナル | 待機タクシー | |||
食堂・レストラン | ファストフード | |||
その他主な施設 | アミューズメントパークTAKAIDA | |||
・注釈 高井田という地域は東西南北にほぼ真四角になっており、高井田中央駅(&地下鉄の「高井田駅」)があるのは、その北東の角になります。一方、高井田ラーメンで有名な住吉があるのは南西の角(バス停の「高井田」)になり、歩いて20分程度かかります。ご注意を。 ・おことわり 当該データはいそべさとしがふらっと駅前を歩いて、感覚で調べたものであり、正確さには大いに欠けます。ご了承ください。 |
・中央駅を探訪:最先端ものづくりの町のもっとも新しい中央駅![]() ちなみに開業したのは平成20年3月。まだ1年ちょいしかたっていません。現時点において、最も新しい中央駅であることは言うまでもありません。駅舎もピカピカで、コンコースの雰囲気はなんとなく新幹線新神戸駅を思い出させます。最近のJR西日本の新駅は皆そうですが、ジェイアール西日本交通サービスによる業務委託駅のため駅員がいない時間があるのですが、監視カメラやインターフォンがいたるところに設置されており安心です。正面の駅名標記が行書体だったり、駅のシンボルカラーがあったりと、そういうとことも新鮮です。 ![]() しかしながら、どうもこの場所は工場地帯にしておくには、便利すぎるようです。駅前にはマンションが立ち並び、地域の中にも建売住宅が建つ一角があったりします。また、スーパーオートバックスだのスーパー温泉だのコンビニ弁当の工場だの物流センターだの、ものづくりとはあまり関係のない立地も多く見られます。もちろんそれ自体は悪いことではなく、時代の流れに沿って街というのは変化していくべきなのですが、工場跡地と思われる広い土地が単に時間貸し駐車場として利用されていたり、地上げに失敗したのか荒れた廃屋があったりと、多少きびしいのも事実です。 「まいど1号」の目的には、技術力の向上に加えて、地域活性化の夢もあったと聞きます。ものづくりの伝統を守りつつ、新しいものも取り入れて、新時代の大都市隣接型工場地帯のあり方を示していってほしい。関西人として、それを願っています。 |
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おおさか東線は放出と久宝寺周辺を除いて、すべて高架。坂道を上る103系。 | 「放出」を「はなてん」と読めるかどうかは、関西人チェックとなりうる気が。 | おおさか東線は各駅ごとにカラーが決まっており、高井田中央駅は赤色。 |
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この雰囲気、新神戸駅と似ている気がするのですが、誰か同意してもらえますか? | ステンレスを波状に加工した柱が、ものづくりの高い技術力を象徴している。 | 匠は匠でも、作っているものは人工衛星の太陽電池パネル? |
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ここまで典型的な下町工場地帯風の場所は実は意外と少なかった…。 | 折るカッターナイフで有名なOLFAの工場。大阪流ものづくりの一つの典型例。 | 世の中には「工場萌え」なる言葉があるそうで。ちょっとだけ萌えたので撮影。 |
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もともとは大きくモダンな建物だったと思うのだが…瓦もだいぶ落ちていた。 | 地図上では機械工場だが、本社ごと滋賀県に移転してしまったとのこと。 | スーパー銭湯とはいえ、天然温泉でかけ流し。それも結構上質の湯であった。 |
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大阪府はひったくり件数日本一。それもなんと、32年連続で栄光の第1位…。 | 駅東側の長瀬川緑地。江戸時代までは、大和川がここ北上していたとのこと。 | 奈良時代に難波と平城京を結ぶためにできた「暗越奈良街道」も高井田を通る。 |
・中央駅で食べる:住吉の高井田ラーメン 高井田で有名なのは、「まいど1号」よりもむしろ、「高井田ラーメン」のようです。ところが、ホームページで評判をしらべてみたところ、「非常においしい」という人と、「僕には合わない」という人がいる様子。ちょっと気になりつつも行ってみました。ちなみに、「駅周辺の基本情報」にも書きましたが、ここは高井田地区の南西の端。地下鉄なら「新深江駅」、近鉄なら「布施駅」が近くなります。町歩きをしたいのでなければ、地下鉄高井田駅やJR高井田中央駅から行くのはちょっとしんどいです。 こてこてのホームページもあるほどなので、結構大きな店かと思いきや、申し訳ないですが、屋台が大きくなったような感じ。客席数10席とあるものの、実際には7〜8人入ったら一杯になってしまいそうです。日曜日の昼間でしたが、1人客の中高年男性が数人と、中年夫婦が一組。典型的なうらびれたラーメン屋です。 さてラーメンですが、何と言っても麺が太い。細うどんぐらいはあります。極太です。これではゆでるのも大変でしょう。しかし、辛めの醤油スープとはよく合います。決して正統派のラーメンではないけれど、ときどきすごく食べたくなるようなラーメンでした。普通の中華そばだと500円という価格設定も嬉しい限りです。 小さい店だからか、地元の方は持ち帰りが多いようです。私がいる間にも2組、持ち帰りがありました。そのスープは「赤玉ポートワイン」の瓶に入れて渡す模様。なかなかにエコです。地元に密着している店というのはやはりおいしい店が多いので、そういう点でも十分に合格といえます。 下町のラーメン屋の雰囲気とあの極太麺を味わいに、ぜひ一度行ってみては。 |
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外観は決して怪しくない。外にも椅子があり、混んでいるときは結構待つのかも。 | 麺は極太だが、決して重すぎない。むしろ軽く食べられる系のラーメンである。 | 赤玉ポートワイン自体、最近あまり見かけないが…。タイムスリップ感も味の一つ。 |
・中央駅の先へ:近畿大学原子力研究所 東大阪と言えばものづくりの町。この町にふさわしい「中央駅の先へ」は何か…探し回った結果、見つけました。日本の私立大学では唯一の原子炉が東大阪市の近畿大学内にあるのです。 ここがすごいのは、単に町中にあるとか、私立大学唯一の原子炉であるというだけではなく、研修会で一般の人も原子炉を運転するチャンスがあるということ。これはおそらく人生の中で一度しかないチャンスだということで、参加してきました。 近大の原子炉UTR-KINKIは1959年(昭和34年)に東京博覧会でアメリカ合衆国が出展した教育用原子炉で、これを政治家でもあった近大初代総長世耕弘一が買い取りました。その出力は1W。電球もつきません。とはいえ、発電を目的とはしておらず、冷却する必要もないため、安全性が高く、教育・研究に使いやすく、運転・管理もしやすいそうです。最近は、共同研究のほか、見学や総合学習、オープンキャンパスなどで見学者が増える一方とのこと。50年前の原子炉と思えない大活躍ぶりです。 研修会は1日で、多少は科学や原子力発電の知識が必要かもしれませんが、ほぼ素人である私でも十分理解できました。なんといっても、実際の原子炉を運転できるのは日本ではここだけ。中性子源の火種を入れて原子炉を運転しだすとか、調整棒の使い方とか、臨界とはどういう状態なのかとか、やはり体験すると簡単に理解できます。また、運転中に原子炉周辺で放射線量を測定したのですが、炉心周辺とそれ以外では全くレベルが違いました。運転中でも係員の方は原子炉の周囲で平気で作業していたのですが、これも「知っていれば原子力は決して恐ろしくない」ということなのでしょう。 1960年ごろ、原子力というのは次世代エネルギー・最先端科学としてとして大いに注目され、多くの学生が集まっていたそうです。ところが、その後の事故や不祥事で「原子力低迷期」を迎え、近大からも原子力工学科が消えてしまいます。しかし、最近、団塊の世代の退職や環境問題への対応、原子力発電所の更新の問題などが出てきて、再度、原子力分野での人材養成が急務となっているそうです。たしかに、原子力に対する風向きが若干変わってきているのは、現在の仕事の関係でもなんとなく実感されるところです。 原子力新時代に向けて頑張る50年選手UTR-KINKI。うまく使えば、まだ倍以上は持つだろうとのこと。貴重な教育研究用原子炉として、いつまでも東大阪の地に原子の灯をともし続けてほしいものです。 |
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近鉄長瀬駅から近大までは徒歩約10分。典型的な学生街が続く。 | 9.11以降管理が厳しくなったとのこと。とはいえ、原発ほどのものものしさはない。 | 手前が共同利用・管理棟、奥が原子炉棟(原子炉が格納されている)。 |
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現時点で日本で活躍する最古の原子炉とのこと。1961年設置なので満48歳。 | 炉心の状態も上から観察できる。ここにいても、放射線量は外界の2〜3倍程度。 | 最後に修了証とおみやげに近大原研のマスコット「1W君」のぬいぐるみを頂く。 |