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全国中央駅めぐり・その9

「千里中央駅」
(北大阪急行南北線/
大阪高速鉄道大阪モノレール線)

−フロンティアの旅を続ける中央駅−


 全国中央駅めぐり、第2部のトップを飾るのは、ニュータウン新線終着駅型中央駅の雄とも言うべき、千里中央駅です。タイトルを見ても分かるとおり、千里中央駅には北大阪急行と大阪モノレールの2社が乗り入れており、まさに交通の結節点、一大ターミナルとなっています。二つのデパートに複数のショッピングモール、ホテルも兼ね備え、単に千里ニュータウンの中心というだけでなく、事実上、北大阪の中心地として発展しているのが、この「せんちゅう」なのです。
 この街も数年前まではニュータウンのオールドタウン化が叫ばれていました。入居時期がほぼ同時期だった故に、高齢化や住宅・施設の老朽化などが全て一斉に来てしまったのです。ところが最近、あまりその話を聞かなくなっている気がします。さてどうなっているのか、期待と不安を胸に訪問してみました。(2009年3、5月訪問、2009年5月掲載)
中央駅駅舎
中央駅駅舎
[中央駅類型:ニュータウン新線終着駅型]


駅の所在地:大阪府豊中市新千里東町 駅周辺の基本情報(見える範囲で)

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施設種別
有無
施設種別
有無
デパート
スーパー
コンビニ
郵便局
バスターミナル
待機タクシー
食堂・レストラン
ファストフード
その他主な施設 ホテル、図書館、市立文化センター等
・注釈
 千里中央駅周辺の中心地区は「LABI千里」を北端、「大阪モノレール千里中央駅」を南端として、南北500メートル、東西250メートルの区域にすっぽりと納まります。主要施設はすべてペデストリアンデッキで結ばれており、完全に歩車分離されています。さすが、計画都市!

・おことわり
 当該データはいそべさとしがふらっと駅前を歩いて、感覚で調べたものであり、正確さには大いに欠けます。ご了承ください。


・中央駅を探訪:ニュータウンの明日へ向かって進む豪華客船型中央駅

 中央駅めぐりを始めた時に、最も典型的な中央駅として頭に思い浮かんだのが、ここ千里中央駅でした。横須賀中央駅は別としても、ニュータウンの中心地に「中央駅」という名前の駅をつけるきっかけとなったのが、ここ千里中央駅であることは論を待ちません。
 ちょうど私が公務員になった10年ほど前、ニュータウンのオールドタウン化というのが大きな問題になっていました。ニュータウンは入居世代が同世代にかたまるため、高齢化も一気に訪れる。病院などが足らなくなる一方で、街は活気を失い、ゴーストタウン化する。そんな危惧が真剣になされていたのです。しかし、最近はあまりその話を聞きません。というのも、ここ千里ニュータウンでは再整備が始まり、若い世代が戻ってきているのです。その象徴とも言うべき千里タワーも竣工間近。梅田にも難波にも列車1本で行ける利便性の高さと、分譲時期が早いことによる1戸当たりの面積の広さという優れた住環境を武器に、新しい町へと変わりつつあるのです。
 こう書くと、あくまでも物理的な環境の良さがこの街の再生につながったように見えますが、おそらくそれだけではないでしょう。
 今回、千里中央駅から東町近隣センターを抜けて千里中央公園まで歩いたところ、途中、木々で暗い所や建物の影、空き店舗なども結構ありました。しかし、決してゴミが散乱はしておらず、非常にきれいに保たれているのです。ところどころでは、熟年の集団やベビーカーを持ったお母さん方の立ち話も。初夏の日曜日の午後、おだやかな時間が流れていました。
 千里中央公園の展望台横の駐車場も満車でしたが、整理員がいないにもかかわらず、ちゃんと駐車場の真ん中で1列に順番待ちをしており、空きが出たら順番に入っていくというルールが徹底されていました。失礼ながら、大阪の他地域ではなかなか見られない光景です。民度、という言葉が適切なのかどうか分かりませんが、街としての公共心、文化水準というものはかなり高いのではないかと感じました。
 ところで、この街には、あほんだら獅子をはじめさまざまなモニュメントがあります。これらは関西電力だの、大和銀行だの、住友銀行だの昔の大阪財界から寄贈されたものが大半です。当時の期待の高さを感じることもできますが、逆にこのまちづくりが財界や行政主導で行われたことも裏付けています。ただ、それからもう40年以上たち、当時の熱意を受け継いだ人々が自分たちの手で新たなまちづくりをはじめ、その環境に引かれて、若い世代が流入しつつあるのでしょう。この街は、確実に次の世代に引き継がれている。遠くにホルンのロングトーンを聞きながら、そんな希望と確信が心の中に広がっていきました。
 いろいろと調べていく中で、千里中央駅を「豪華客船のようだ」と評した発言を見かけました。LABI千里を船首として、艦橋のせんちゅうパル、セルシー横の広いデッキを経て、船尾にはモノレール。デッキでは、フリーマーケットだのダンスフェスティバルだのの楽しい催しがいつも開催されていて、乗船客を飽きさせない。なるほど、なかなか見事な例えです。
 思い起こしてみれば、千里中央駅、そして千里ニュータウンはいつも中央駅とニュータウンの最前線を走ってきました。ニュータウンのオールドタウン化という課題は乗り越えつつあるようですが、新たな難題はまた次々と押し寄せてくることでしょう。これからも、後から続く多くのニュータウンと中央駅の先頭に立って、時代の荒波を乗り越えて行ってほしい。そう願っています。
 
吹き抜け 駅名標 中央改札
ホーム階と食堂街が吹き抜けになっており、地下とはいえ独特の開放感がある。 開業時は桃山台駅から万博会場方面に延びていた。トンネル跡が残る。 改札は南・中央・北の3か所。最近の設計なら人件費節約のため1か所だろう。
きっぷ売り場&阪急 北大阪急行と大阪モノレールの間の路面表示 モノレールの千里中央駅
北大阪急行は運行形態も切符売り場も、実態上は地下鉄御堂筋線の延長。 北大阪急行と大阪モノレールの駅は少し離れているが、路面にずっと表示がある。 木目調を多用しており、非常にきれいで、洗練された感じの駅。駅員さんも丁寧。
モノレールギャラリー 駅名標 ホーム(しんたまご)
駅の中には自由に座って飲食ができるスペースやギャラリーまで設置されている。 奥にヤマダ電機「LABI」の看板が。船で言うと、モノレール駅が南端、LABIが北端。 大阪モノレールには広告ラッピングカーが多い。なかなか経営は厳しい模様…。
千里阪急 千里セルシー LABI千里
有名な建築家の作ではないようだが、なかなかにモダンで魅力的な建築物。 1973年に、既にこんな屋外を取り入れたショッピングモールがあったとは驚き。 LABI千里にコラボに千里タワー。北口周辺も新たな町に再生しつつある。
府道吹田箕面線 一戸建て住宅 ロの字配置の府営住宅
“ニュータウン”とはいえ開発から40年。道路の木々もすっかり大きくなっている。 一戸建て住宅は新しいものと古いものに見事に分かれる。順調に世代交代中。 特徴的なロの字配置の団地。真ん中にコミュニティを作るつもりが実際は駐車場。
ちょっと寂しい近隣センター あほんだら獅子 千里中央公園の日曜日の午後
空き店舗は多いが、荒廃はしていない。スーパーの品ぞろえも決して悪くない。 大阪の鬼門に獅子頭を据えたとか。寄贈者に大和銀行の文字。ここにも歴史が。 この街は確実に次の世代に引き継がれている。さわやかな日曜日の午後の風景。

・中央駅で食べる:ケンタッキーフライドチキン小野原店のカーネルバフェ

 千里ニュータウンと切っても切り離せない関係にあるのが、大阪万博。私がまだ生まれる前、1970年の開催ですが、さまざまな意味でエポックメイキングなイベントだったようです。
 万博で紹介され、その後普及されたものは数多くありますが(動く歩道とか全天周スクリーンとか)、食文化の面でも万博がきっかけで我が国に入ったきたものが多くありました。そのうちの一つが、今では全国各地で普通に目にすることができる「ケンタッキーフライドチキン」です。万博で実験店舗を出したのが、日本初上陸だったそうです。
 ということで、今回はケンタッキーなのですが、この小野原店、決して日本最初の店舗というわけではありません。実は、この店が全国で唯一、ケンタッキー食べ放題を行っている店なのです。昔々は全国で3店舗ほどあったそうですが、いつの間にか減り、今ではここ1店舗になってしまいました。なぜこの店なのかは…正直謎です。
 ちなみに味は…普通のケンタッキーと一緒です。衣の雰囲気がちがうものもありましたが、やはりいつもながらのケンタッキーの方がおいしかった気が。私はドラムよりは手羽の部分が好きなので、そういう部位の好みがある人には良いかもしれません。ただ、フライドチキン以外のサイドメニュー(揚げ物やサラダや炊き込みご飯など)の味はかなりいまいちで、平日1,200円、休日1,400円という値段と照らし合わせると、ネタとしてはともかく、何度も行きたくなるかというとちょっと疑問符です。
 とはいえ、一度は体験すべきケンタッキーファンの聖地・小野原店。千里中央駅からバスで一本、ちょっと足を延ばしてみては。

微妙な値段設定 その他揚げ物 聖地巡礼
食べ放題とはいえ、1,200円or1,400円というのは微妙な値段設定…。 他にもいろんな揚げ物があるが、やはりフライドチキンが一番おいしかったかも。 外見は普通のKFC。まあ、一度体験できればいいかなといった感じでした。

・中央駅の先へ:万博記念公園

 「食べる」でも書きましたが、やはり千里ニュータウンといえば万博でしょう。決して万博のためにニュータウンができたわけではないようなのですが、鉄道などの都市基盤の整備が万博と合わせて行われたのは間違いありません(つくばもちょっと似ています)。
 ということで、千里中央駅からモノレールに乗って2駅、「万博記念公園」駅に着きました。彩都方面と門真市方面に分岐する、大阪モノレールの拠点駅です。駅を降りると早速太陽の塔が迎えてくれますが、塔がある自然文化園までは中国自動車道を越えて延々と歩かなければなりません。さすがに、スケールの大きさが違う公園です。
 自然文化園は入場料250円がかかりますが、奥にある国立民族学博物館や日本民芸館のチケットを合わせて買うと、事実上無料になります。民族学博物館はざっと覗くだけでも決して損はない施設なので、セットで購入するのがいいかと思います。
 さすがに私の年齢以上に経っているので万博当時のものは少なくなってきているのですが、太陽の塔を始め、大屋根や鉄鋼館が保存されています。近年の70年代ブームもあり、鉄鋼館は近々改修工事に入り(もう建設事務所ができていました)、万博記念館としてリニューアルオープンします。あの高度成長時代の最後の熱気を感じることができる空間となりそうです。
 青々と整備された芝生の広場も多く、子供がたのしめる遊具もいろいろとあるようです。休日の一日、ここでゆっくりと過ごすのも良いかもしれません。ただ、ガンバ大阪の応援帰りの人と一緒になるとモノレールが猛烈に混むので、それだけは気をつけてくださいね。

太陽の塔 一部残っている大屋根 鉄鋼館
万博といえばやはりこれ。これを保存し続ける日本人自身も、実は面白いかも! 大屋根は単なる屋根だけでなく、中に空中都市のパビリオンがあったらしい。 唯一残った当時のパビリオン・鉄鋼館。再整備の上、数年後に一般公開予定。
万博記念館 国立民族学博物館 宿泊室の様子
大阪ガスの施設「ディリパ」内に結構立派な万博記念館があるのでマニア必見。 旅好きにはたまらない国立民族学博物館。いつも時間が足りなくなってしまう…。 少しずつ荒れ果てつつあるエキスポランド。早く活用方法が決まるといいのだが。


リンク

千里ニュータウン史(By (財)大阪府タウン管理財団千里事業本部)
事例研究委員会千里NT報告(By (社)日本都市計画学会関西支部)
店舗詳細 小野原店(By ケンタッキーフライドチキン)
全国で唯一ケンタッキーフライドチキンが食べ放題の「カーネルバフェ」に行ってきた(By Gigazine)
万博公園(By (独)日本万国博覧会記念機構)


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