全国中央駅めぐり・その3 (スカイレールみどり坂線) −ニュータウンのニュータウンによるニュータウンのための中央駅− 全国に「中央駅」は25駅あるのですが、中央駅めぐりをしない限り絶対行くことはなかっただろう…というのがこの「みどり中央駅」です。そもそも、スカイレールというロープウェイに似た新交通システム。そして、終着駅には何もないのです。住民とごく一部の鉄道マニアしか訪れないであろう駅を訪問してみました。(2009年1月訪問、2009年1月掲載) |
駅の所在地:広島県広島市安芸区瀬野町瀬野西 | 駅周辺の基本情報(見える範囲で) | |||
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デパート | スーパー | |||
コンビニ | 郵便局 | |||
バスターミナル | 待機タクシー | |||
食堂・レストラン | ファストフード | |||
その他主な施設 | みどり坂総合案内センター | |||
・注釈 とにかく、何もありません。ここはニュータウンに住む人が住む目的だけに使う駅なのです。スカイレールサービスの運輸部があるようですが、一般の人は入れなさそうです(窓口はみどり口駅のみ)。 なお、トイレもありません。公園のを使えとのことです。 ・おことわり 当該データはいそべさとしがふらっと駅前を歩いて、感覚で調べたものであり、正確さには大いに欠けます。ご了承ください。 |
・中央駅を探訪:育ちゆく街の小さな終着駅 ところが、ここ、みどり中央には住宅以外、何もありません。みどり中央駅周辺にあるのは自販機と住宅だけなのです。(厳密に言えばバイク屋1軒はありますが…。)すなわち、地元住民以外はまず使うことがないのがこのみどり中央駅です。 そして、通っているのも「鉄道」ではなく、スカイレールという名の「新交通」だったりします。スカイレールというのはロープウェーと懸垂式モノレールを合体させたようなもの。駅から出て行く時や駅に着くときにはロープウェーのように揺れるものの、それ以外の時は明らかにロープウェーよりもしっかりとした足取り(手取り?)で、モノレールの仲間なのだなあということが理解できます。そもそもニュータウンの名前自体が「スカイレールタウンみどり坂」であり、新交通システムであるスカイレールが街の象徴、売りとなっているのです。 「みどり中街」という途中駅もありますが、これも当然ニュータウンの中のため、スカイレールの駅は瀬野駅前にある「みどり口」以外、すべてニュータウン内にあります。そして、このスカイレールを運営するのは、これまたニュータウンの造成業者である積水ハウスなどが出資した会社。この駅を利用するのはニュータウンの住民のみ。まさに、「ニュータウンのニュータウンによるニュータウンのための中央駅」という言葉がこれほど似合う駅はありません。 みどり坂自体も、大きなきれいな家が立ち並び、奇をてらった区画割りもなく、素直で整然としたニュータウンに仕上がっています。特に、みどり中央駅北口から延びる「並木中央通り」は壮観で、紅葉のシーズンはすばらしい景色になると想像できます。まだまだ木も大きくなっていくでしょうから、この街の住民は、年々育ちゆく街と移りゆく季節を楽しめるのでしょう。(って、不動産業者みたいになってきましたが…。) みどり中央駅の南には、このニュータウンで一番大きな中央公園が広がります。「インカの階段」だの「UFOの丘」だのちょっと間違っちゃった奇妙なモニュメントが転がっていたりもしますが、住民が集まれるような大広場やトイレの設備も整備されています。この日は大広場で、翌日に迫った「みどり坂町内会とんど祭り」の準備をしていました。大勢の住民の方が一つのことに取り組む、それによって新たな街のきずなが生まれ、名実ともに新しい街が育っていくのでしょう。 今は空き地が広がるみどり中央駅西側の広場も、最終的には商業用地として確保されているようです。10年後、20年後、そして30年後、どんな街に育っているのか、再訪が楽しみなみどり中央駅でした。 |
みどり中央駅の奥が整備場になっており、この日も係員の方2名が整備していた。 | 駅名票と思しきものはこの程度なので、これを撮影。監視カメラはきちっとある。 | おそらく正面に当たる北口。駅の改札はちょっと階段を上がったところになる。 |
石と松で日本庭園をイメージ?玄関口なのでもうすこし整備しても良いのでは。 | 北口からは一直線に坂道が伸びる。新緑や紅葉の季節はすばらしい光景だろう。 | この日は積水ハウスが売り出しイベント開催中。子供向けの遊具も。 |
町内会総出でとんど焼きの準備中。こうやって住民の輪が広がっていく。 | かなり殺風景な1階コンコース。改札は入るときのみで、切符は回収されてしまう。 | 2階のホームはガラスが多用されており、意外と明るく、ちょっとわくわくさせられる。 |
・中央駅で食べる:つつむの肉まん 上の基本情報にも書いたとおり、みどり中央駅周辺には飲食店はおろか、コンビニすらありません。 ということで、本来何も食べられないはずなのですが、この日は積水ハウスが「2009新春フェスタ」と銘打った販売イベントをやっており、そこに広島「つつむ」が出店していました。ということで、看板メニューの肉まんをゲット、早速近くのテント内で試食してみました。 実はすでに午後2時過ぎ、肉まんは蒸し過ぎの状態になっており、残念ながら中の具はかなり固まってしまっていました。しかしながら、皮は十分においしく、小麦の味が十分に引き出されています。下の写真を見ても、そのモチモチ感が伝わってくるのではないでしょうか。今度はぜひ、本店で食べてみたいものです。 ちなみに、販売イベント実施中ということで、複数の積水ハウスの方から声をかけられてしまいました。みどり坂で家を購入するのは30代の子どもを抱えた夫婦が多いとのこと。たしかに、私も、ついしばらく前までそれに該当していたわけで、家を探しに来たお客さんに見えるのだろうなあ…(苦笑)。 |
屋外販売という不利な状況でありながら、この色つやは只者ではない。 | 商店などがないためか、みどり中央駅の下は自販機銀座の様相。 | みどり坂の生命線・ショージ。瀬野駅からはものすごい階段で断念。 |
・中央駅の先へ:瀬野八越え(大山峠) スカイレールタウンへの玄関口・みどり口駅はJR瀬野駅と隣接しています。この瀬野駅から西隣の八本松駅までの山陽本線10.6キロは「瀬野八(せのはち)」と言われる有名な交通の難所です。 鉄道の世界では有名な3大難所というのがあり、1つは横川・軽井沢間の碓氷峠。もう一つは、福島・米沢間の板谷峠。そしてもう一つがこの瀬野八、大山峠でした。いずれも機関車1台では登り切れず、補機(補助機関車)をつけての運行がなされていました。今日では、碓井峠は長野新幹線の開通により廃止となり、板谷峠も山形新幹線の開通に伴い整備されたため、いまだに補機が活躍するのはJR路線ではここ瀬野八だけとなってしまいました。更に一般の電車や夜行列車はそれなりに馬力も向上したため、現在、補機が使われているのは広島→岡山方向(上り)の貨物列車だけとなっています。 昔は瀬野駅に「瀬野機関区」があり、ここで補機をくっつけていたそうなのですが、いまはJR天神川駅南の広島貨物ターミナルで連結され、西条駅で切り離しされます。切り離された補機は単独で戻ってきます。この補助機関車(EF67)は広島県の県木にちなんでもみじ色をしており、機関車も通称「もみじまんじゅう」と言われるそうです。 惜しむらくは、なぜここに「峠の釜めし」や「峠の力餅」のような名物が生まれなかったのかということ。生まれていれば、それなりに売れていたでしょうし、観光の目玉にもなっていたのでしょうが…。名物がないことが、鉄道ファンしか知らない隠れた名所となってしまっている一つの原因のような気がします。 貨物用電気機関車の性能はどんどん上がっており、そのうち補機が必要なくなる日が来るかもしれません。個性がなくなりつつある日本の鉄道に、こういうところが残っているというのは、ファン的にはうれしかったりするのですけどね。 |
EF671。押し上げに特化した電気機関車のため、デッキは上り方面のみに設置。 | 海田市駅ホームで瀬野八へ向かう貨物列車を発見。先頭は青色のEF65。 | これを後ろで押し上げるEF67。急な坂のため逆走防止という意味もあるらしい。 |
瀬野はもともと機関区もあった鉄道の町。200人以上の職員がいたそう。 | スカイレールみどり口駅も、もとの瀬野機関区の跡地に建っている。 | 帰りはEF67単独、あるいは重連で帰ってくる。終わりなき、重要な片道仕事。 |