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 全国中央駅めぐり・その8

「発寒中央駅」
(JR北海道函館本線)
−最北の地のあったかトライアングル中央駅−


 最北の地の中央駅・月寒中央駅。直線道路がタテ・ヨコ・ナナメに通る街にあり、周辺にはどうも見るべきものが見当たりません。さらに、雪の中、行けるところには限界があります。とりあえず行ってから考えようと駅に降りてみたところ、不思議な温かみのある駅でした。全国中央駅めぐり第1部完結編です。(2009年2月訪問、2009年3月掲載)
中央駅駅舎
[中央駅類型:同名駅回避型(自社線)]


駅の所在地:北海道札幌市西区発寒10条 駅周辺の基本情報(見える範囲で)

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施設種別
有無
施設種別
有無
デパート
×
スーパー
コンビニ
郵便局
×
バスターミナル
×
待機タクシー
×
食堂・レストラン
ファストフード
×
その他主な施設 駅構内にパン屋さん、KIOSK
・注釈
 駅の北側にはっさむ地区センター、西消防署、発寒神社などがぽつぽつと建っており、南側には従来型の商店街やスーパーがあります。札幌から非常に近い場所にあるにもかかわらず、意外と発展していない印象です。

・おことわり
 当該データはいそべさとしがふらっと駅前を歩いて、感覚で調べたものであり、正確さには大いに欠けます。ご了承ください。


・中央駅を探訪:焼き立てパン屋さんのある中央駅

 発寒中央駅は昭和61年にできたまだ新しい駅です。とはいえ、発寒自体は1857年(安政4年)に幕府の旗本たちが入植したことにはじまるそうで、約150年という北海道では有数の歴史を誇っています。札幌市西区の歴史年表では一番左側に載っていました。
 ちなみに、発寒という地名は桜鳥(ムクドリ)を意味するアイヌ語の「ハチャム」からとられたとの説が有力とのこと。これも由緒正しい感じがします。
 もともと琴似駅と手稲駅の間は約7キロにわたって駅がなかったことから、昭和61年に臨時乗降場として発寒中央・発寒・稲積公園の3駅ができたそうです。発寒中央駅付近には入植以来地域の中心となってきた発寒神社もあり、周囲には商店街も発達していたことから、こちらの駅を「中央」と名付けたものと思われます。
 ところが、どうも今や、イオンSC(ショッピングセンター)も立地した「発寒駅」の方が活性化しているようなのです。列車に乗っていても、駅で降りる人の数が全然違いました。発寒中央は副都心として発展を続ける琴似と、何もなかったが故にマンションやSCが立地しやすかった発寒に挟まれて、残念ながら取り残されてしまった感があります。大きな街は一定間隔にしか存在できない、地理でそんなことを習った気がしますが、発寒中央駅はちょうどそんなエアポケットに入ってしまったようです。
 しかし、この駅には大きなアドバンテージがあります。それは、橋上駅の駅舎内に「焼き立てパン」のお店があるということ。発寒中央駅の駅舎自体、発寒駅よりも立派に作られており、お店を作るだけの場所があったのでしょう。駅コンコースから、パン焼きの作業を見ることができます。そして、パン屋さんの灯りがコンコースを明るくやさしく照らしており、その前には手作りであろうクッションが備え付けられた長椅子が用意されており、多くの乗客が椅子に座って列車を待っています。
 一方、改札側には有人の改札兼みどりの窓口と売店KIOSKがあります。改札と売店とパン屋と長椅子と、狭い場所にこじんまりと、まとまっているのです。
 私が駅に行ったときは、長椅子に座った乗客と、窓口にいる駅員さんと、KIOSKの売り子さんの3者が、それぞれの持ち場(?)にいながら話をしていました。話の内容は忘れましたが、この駅はそんなことができる、そしてそれがしっくりくるような雰囲気を持った駅なのです。今日も、明るい話声があのコンコースで飛び交っているのでしょうか。
 大都会札幌から8分少々。ここは、ちょっと取り残され気味たけど明るい声の響く、あたたかい北国の駅でした。
 
発寒中央駅ホーム 駅名標 階段登り口
ホームは横壁も透明プラスチック板できっちりと塞いである。寒さ対策なのだろう。 副都心・琴似とイオンSCのある発寒に挟まれており、そういう意味では苦戦中。 これも寒冷仕様なのだろう。ホームまで降りる階段にもちゃんとドアが付いている。
コンコース パン屋さん パン製造中
橋上駅舎上には、みどりの窓口・KIOSK・焼き立てパンの店が入っている。 パン屋さんの前には手作りのクッションが備えられたベンチが用意されている。 ここで生地から作っている模様。香ばしいかおりがコンコースに広がる。
発寒商店街 札幌信用金庫月寒支店 洋次通り
発寒中央駅から南に向かうと昔ながらの商店街。ちょっと厳しい状況に見えた。 駅の北側にある石造りの倉庫。美瑛駅に似ているが、北海道様式なのだろうか。 はっさむ地区センター。西消防署も同居。ちなみに、線路をはさんで南には交番。
発寒神社 発寒神社演舞場 発寒移住記念碑
発寒地域の歴史を語る発寒神社。開拓民の心のよりどころだったのであろう。 境内には演舞場もある。地域芸能が盛んなのだろうか。立派な土俵もあった。 発寒地域の歴史は約150年。北海道でも早い時期に開拓された地域の一つ。

・中央駅の先へ:琴似屯田兵村兵屋跡&くすみ書房

 入植が開始されたのは発寒の方が先なのですが、屯田兵村としては琴似の方が先になります。明治8年(1875年)に北海道初の屯田兵村ができたのが、発寒中央駅から1駅札幌寄りの琴似駅周辺なのです。
 屯田兵とは、明治初期に北海道開拓と北方警備、仕事にあぶれた士族の吸収等を目的に、普段は農業に従事しているもの、いざというときは兵士になる人のこと。実際に、屯田兵村には練兵場や射的場もあったそうです。
 琴似の屯田兵村には、主に東北地方の武士などが入植したそうですが、その後、ここに小学校ができたり、村役場ができたりと、徐々に大きな街になっていきました。そして、近年では札幌にも近い便利なベットタウンとして発展し、最近はタワーマンションも建ち始めています。おそらく大半の住民は琴似の歴史をよく知らない人なのでしょう。そのためか、地元の行政(西区)も区役所前の森を「屯田の森」と名付けたり、歩道に開拓時代の風物を示したタイルを貼ったりと工夫しているようです。
 ちなみに、ここ「琴似」で有名なものの一つに、「くすみ書房」があります。一見、さほどフロアも広くない普通の本屋なのですが、「なぜだ!?売れない文庫フェア」だの「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」フェアだのを企画して、一部の関係者の間で話題になっています。私も実際に訪れてみましたが、確かに本に対する愛情が感じられるとともに、並べ方も興味を引く独特のものでした。最近はインターネットで検索して本を買うことが大半ですが、やはり本屋さんも良いなあということを実感しました。
 琴似は札幌からも非常に行きやすい町です。札幌旅行の際、ちょっと時間が余った時に訪れてみてはいかがでしょうか。

屯田兵村兵屋跡 兵屋内部 琴似屯田兵屋
あくまでも「跡」が史跡指定を受けており、建物自体は昭和47年に復元されたもの。 内部は約60u。明治時代当時としてはかなり立派で機能的な建物だったそう。 琴似神社の境内に残る当時の屯田兵屋。冬のためか中には入れそうになかった。
屯田の森 琴似の街並み くすみ書房
西区役所の前にある「屯田の森」。屯田や開拓に関係ある記念碑などがある。 屯田から始まった琴似も、タワーマンションなどが建つ札幌の副都心として発展。 読書家や書店関係者の間で有名な「くすみ書房」。一見、ごく普通の本屋だが…。

・中央駅で食べる:斎藤ファームのローストビーフ

 発寒中央駅の一つ西にあるのが、発寒SCの開業などで今をときめく発寒駅です。
 この辺りはもともと何もなく、駅の敷地も地元の酪農家が寄付したほどだったそうです。今でも、その頃の雰囲気を残しているのが、ここ「斎藤ファーム」です。旧三谷牧場の赤煉瓦サイロを活用し、十勝和牛を使った料理を提供しています。
 どうやら十勝和牛を使ったハンバーグが有名なようです。ステーキも捨てがたかったものの、やはり有名なものはそれなりに理由があって有名であったりするため、ハンバーグはとることにしました。そして、ステーキとの料金差でローストビーフをとることにしたのです。
 ハンバーグもおいしいのですが、きめが細かすぎ、ほわっとしている気もしました、一方、ローストビーフは固めの肉なれど、十分に肉のうまみが凝縮しており、私にはこちらの方が合いました。このあたりは好みかもしれません。食べログにも書いてありましたが、どの料理も平均点以上の味はあるようです。北海道産のさまざまなワインがグラスで楽しめるのも一人旅にはうれしいところです。
 しかし、この店の何よりのアドバンテージはその雰囲気でしょう。照明もあえて落としているようで、古い木組みの建物の中で、ローストビーフと赤ワインをじっくりと味わっていると、あわただしい旅の一時というのを忘れてしまいそうです。
 北海道に行くこと自体は、実はだいぶ前から決めていたものの、全国中央駅めぐりというのはせいぜい去年の11月から始めた取り組みです。とはいえ、この数カ月で、まず人生の中で行くことがなかったであろう多くの中央駅に降り立ってきました。おしゃれな市民文化の育ちつつある中央駅、古い案内看板でなぞ解きをした中央駅、新しい町の成長を期待した中央駅、ニュータウンの再生に取り組む中央駅、外国の軍隊が中心部に居座っていた中央駅、町が鉄道を支えていた中央駅、平和への願いを感じる中央駅、そして開拓の歴史を刻む中央駅…本当にいろんな中央駅に行ったものです。そして、それぞれ期待を裏切らない、期待以上の何かがありました。
 結構行った気がしますが、まだ全体の3分の1程度。まだまだ多くの中央駅が待っています。これからどんな中央駅とどんな街が待っているのでしょうか。そんなことを考えながら、北海道・発寒での夜は更けていったのでした。

三谷牧場 入口 レストラン1
ペンキで三谷牧場と書かれている。入るにはこの裏側に回り込む必要がある。 車での来場を前提としているようだが、発寒駅からでも十分歩いていける距離。 カウンターもあるようであり、のんびりとカクテルなどを楽しむのも良いかも。
レストラン1 ハンバーグ ローストビーフ
照明はアルコールランプ主体であり、本当に落ち着ける雰囲気を作り出している。 ハンバーグは私にはキメが細かすぎ。ウェルダンにした方が良かったかも。 固めで味の濃い肉が好きな人には大いにお薦め。渋めの赤ワインと一緒にどうぞ。

第1部:全国中央駅めぐりのはじまり 完


リンク

パン屋のある発寒中央駅(By 秘境100選ver2)
駅探訪 発寒中央駅(By 北海道大学鉄道研究会)
発寒神社(By 札幌の神社探訪)
くすみ書房へようこそ(By くすみ書房)
札幌散策 琴似編(By もっともっと北へ)
斉藤ファーム(By 斉藤ファーム)



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