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富山県長野県2県横断6泊7日の旅「来た道 行く道」
2日目(4月30日)「曲がった木、割れた木、細長い木…」

ルート

富山市内―(以下、自家用車)―道の駅井波―道の駅たいら―★五箇山:相倉集落―◎道の駅上平ささら館―★岩瀬家―★菅沼集落――★城端SA―△善徳寺―★城端曳山会館・じょうはな織館―★散居村展望台―◎道の駅カモンパーク新湊―富山市街(オークスカナルパークホテル富山泊)

※凡例: ★入場・体験観光 △外観観光 ◎食事

写真など

相倉集落1 相倉集落2 相倉集落3
庄川ぞいのすごい道を越えて(友人に運転してもらっていたので私は乗っていただけですが…)、世界遺産・五箇山へ。行こうと思ってずっとこれなかった場所。 相倉集落は日本の山村イメージとは違い、1軒1軒の敷地が大きく、家の間隔も開いており、広々としたのどかな感じ。また、配置に高低差をよく活用している。 世界遺産として一級の観光地になっても、どこかのどかな雰囲気が広がっているのは、実際に人が住んでいる「生きている集落」だからかもしれない。
相倉民俗館1 相倉民俗館2 相念寺
2つの合掌造り家屋を民俗館として開放。いろりの煙ですすけた木材が日に当たって美しい。木組みについての詳細な解説もあり、非常に興味深い。 合掌造りの合掌とは、本来はこの「組み合わされた骨組みの状態」を指すのだそう。釘を使わず、ネソ(マンサクの木から作った結束材)だけで組み合わせている。 お寺も合掌造り。これからもこの集落と人々を見守り続けるのかな。そして、数十年後、数百年後に自分の子孫とかも見に来るのかなとか思いつつ。
岩瀬家1 岩瀬家2 岩瀬家3
五箇山最大の合掌造り・岩瀬家。この合掌造り・水芭蕉・鯉のぼりの風景は有名だそう。囲炉裏では薬草茶がふるまわれ、当主が建物の説明をしてくださる。 屋根裏もさすがに巨大。下が見えるので多少怖かったり。とはいえ、この木で囲まれた空間と窓から差し込む日の光には、どこか神々しい気分にさせられる。 奔放に組んであるように見えて実に合理的な組み方。曲がった木、割れた木を、短所ではなく長所として使う手法。私たちが忘れかけたものがここにはある。
菅沼合掌造り集落1 菅沼合掌造り集落2 菅沼合掌造り集落3
ここら辺りからかなり雲行きが怪しくなってきたものの、せっかく来たということで、菅沼集落へ。ここは高台に車を止めて、エレベーターで集落まで降りる。 川沿いの平地部分にあるため、菅沼に比べると、こじんまりとまとまった印象。当地の昔の名産品について取り上げた「塩硝の館」はかなり興味深かった。 と、ここで突然傘をさしても仕方ないほどの大雨。これでは観光も何もないので、五箇山から撤退。当初予定にはなかったものの304号で城端へ降りることに。
善徳寺 曳山会館・蔵回廊 城端駅
ということで、城端へ。山を下りると、そこは晴れだった!やっぱり五箇山は山だなと実感。SAヨッテカーレ城端でおにぎりをたべたり、買い物をしたり。 独特の外観にも引かれて城端曳山会館へ。建物はイギリス人建築家設計だそうで。曳山祭の「飾り山宿」制度、かなり独特なもの。是非一度見てみたい。 知識はなかったものの「もしや」と思い降ろしてもらった城端駅。建物財産標によると明治31年10月建造の建築物。古いものが現役で大切に使われている。
ture tears 蔵のある街並み 散居村展望台
お祭りポスターにも「ture tears」のキャラクターが使われており、「萌えおこし(萌えによる町おこし)」かと思いきや、城端に元請けアニメ会社があるのだそう。 古いものを守りながらも、新しいものを積極的に取り入れていく町、城端。これは一筋縄ではいかないかも。ゆっくりと訪れたい、訪れるべき町がまたできた。 多少無理をしてもらって、散居村展望台へ。夕日の水面への反射こそなかったものの、地理の教科書で見るような独特の風景がそこには広がっていた。


旅のメモから

 写真解説にも書きましたが、合掌造りの家というのは実に様々な木を効果的に組み合わせています。
 私は建築学の専門家でないので詳しい説明はできませんが、舞台技術学校美術コースに2年間通っていたので多少は木材のことなども聞くことがありました。そんな私が、合掌造りで特にすごいと思ったのが3点。「大きくて重い屋根を支えるために、三角形の底辺に当たる梁の部分に、あえて雪により根元が曲がった木を使ったこと(チョンナバリ)」「雪の重みに耐えるとともに、雪がない時でもしっかりと重みを支えるために、あえて釘を使わず柔軟さのある木を拠った縄でつなげ、あえて遊びを作ったピン構造(合掌尻)」、そして、「動いては困る横軸(ヤナカ)に割れやすいものの硬さのある栗の木の割材を使い、動いてもよい縦軸(釘竿・杭竿)には柔らかく細長い木を丸ごと、時には継ぎ足して使っていること」。素人意見なので間違っているかもしれませんが、少なくとも木を知り尽くして作っているのは間違いなく、同行の友人がいるにもかかわらず相倉民俗館や岩瀬家で見入ってしまっていました。(一番素人に分かりやすいのは、この「菅沼合掌造り/建築学」かと思います。)
 いまや建築の分野でも、曲がった木や割れた木を使う技術というのは失われつつあるそうです。確かに世の中全体が、規格というものに慣れ過ぎているきらいがあります。確かに規格というのはとても便利なもので、標準化というのは産業分野における世界戦略上も必須なわけですが、単一性というものは時には非常にもろい部分があることも認識しておく必要がありそうです。それと同時に、ある意味自然の産物である人間一人ひとりは決して規格化・標準化しない。この時代にあっても、人に対してはそれぞれの特徴を見極めて、短所も長所として使っていく必要があることを忘れてはいけないのではないか。そんなことを、岩瀬家の曲がったハネガイを見ながら考えていたのです。
今日の泊まりは「オークスカナルパークホテル富山」(3連泊)


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