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過去の「ほぼ演劇日記」 保管庫(2015年1月〜3月)


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震災20年と後ろめたさと
(「あくびと風の威力」2015リーディング感想)

・今日一日、みなさんの投稿なり、「あくびと風の威力」なり「神戸在住」なり、東遊園地に行ったりして、感じたのは、どこか後ろめたさを感じている人が意外と多いのだなあと。
・被災地のど真ん中にいた人は、生き残ったことや助け出せなかったことに対する後ろめたさを。県内で被害がなかった地域の人は、自分だけ普通の生活をしていたことやボランティアに行けなかった後ろめたさを。大学で外に出ていた人や生まれていなかった人は、地震を知らないという後ろめたさを。
・そんな後ろめたさを感じながらも、徐々に前に進んできた20年だったのかもしれません。多分これからもどこか後ろめたさを感じつつ、それでも前に進んでいくのでしょう。
・まもなく1.18、「明日」が始まります。(2015/1/17観劇)

春雪に消えた泡沫の美しさ
(劇的集団まわりみち'39 「泡沫は亡き春雪に消えゆ」感想)

・美しく、また、華やかさすら感じさせる作品であった。決して華やかな題材でない(美術や照明が煌びやかなわけでもない)のにそう感じるのは 役者5名の生き様がそれぞれに輝いていたからかもしれない。
・ある程度歴史的背景を知っていた方がいいが、知らなくても行間?で分かるような仕掛けも。そこを適切とみるか、帯に短し襷に長しとみるかは、若干の疑問が残るところ。戦後の時間の流れの処理も、若い役者さんの素直かつ懸命な演技もあって好感。
・役者さんは、それぞれが奔放に自分の持ち味を発揮しつつも、全体としてまとまりがあるのは、演出の技か劇団の方向性か。梨愛さんは最初に見た時から好みの女優さんだが、今回も非常に繊細かつダイナミックな演技で会場を魅了していた。また、七井悠氏は安定感すら感じさせる。
・このお芝居を観る前に「ガラガラポン願望」の記事を読んでいて、そういう意味でも226事件というのは現時代的な題材なのかなとも。時代を越えて人々が生きる姿を美しく描いた作品であったと思います。今回は見れて良かったです!お疲れ様でした!(2015/2/22観劇)

演じられると楽しいシェイクスピア
(県立ピッコロ劇団「マクベス」感想)

・時代を20世紀初頭のヨーロッパに置き換えての上演。シェークスピア流の文語調をうまく日本語に置き換え、豪華絢爛な舞台美術や衣裳などもあって、しっくりとくる世界が出来上がっていた。やはりシェークスピアはちゃんと見ると面白いよなと再発見。
・マクベスはシェークスピアの4大悲劇の一つだが、他の悲劇に比べるとどこか喜劇的な色彩がある気も。特に今回はマクベスが若い方(橘さん)だっただけに、よりそう感じたのかもしれない。運命に翻弄される姿は悲しくもどこか可笑しい。そもそも人生というのはそういうものなのかもしれないけれど…。
・大鳥れいさんはさすが元宝塚で堂々たる存在感。浜畑賢吉さんのダンカン王も独特の重みがあり、このレベルの方は間近で見るとすごいなあと。ピッコロ劇団員の方もそれぞれに印象が強く、最近、脅し役が多い岡田力さんや魔女役の3人、木全さん、原竹志さんなどが印象に残った。
・池宮城直美さんは初めて知ったが、ヨーロッパ風の退廃感のある、そして遠近法で奥行きのある舞台装置はとても素敵。複雑な舞台装置を演技的にも転換的にも使いこなせるのがピッコロ劇団の強みの一つで、それを存分に生かした美術となっていた。前舞台にある机・椅子もよいポイント。
・シェイクスピア&喜志哲雄&県立ピッコロ劇団のシリーズ、今度は6月に「ヴェローナの二人の紳士」という作品を「東男迷都路」と題してやるそうで、これも楽しみ。シェイクスピアの面白さを分かりやすく教えてくれるシリーズ。もう少し続けてほしいです。どうもありがとうございました!(2015/2/22観劇)

ベットの上での希望
(伊丹想流私塾第19期公演『希望という名のわたしを訪ねて』感想)

・「希望」というテーマと、「ベットが1台」という舞台装置から生み出される12の作品。コメディあり、シリアスあり、小劇場テイストあり、本格演劇テイストありで、飽きさせないラインナップであった。
・個人的な感想としては、「ベット」の使い方が話にしっくりいっていた人とそうでなかった人がある気が。「ベット」の意味するところ(拠り所であったり、寝る場所であったり、セックスの場であったり…)をきっちりと考察して、そこから敷衍させた話の方が連作としてみていて面白かったなとも。
【個々の作品の感想】
「青い空のヒト」前向きでオープニングにふさわしい作品でしたが、作品内での長い暗転はあまり好きではありません。暗転なしでも時間経過は示せるのでは。
「幽霊ウォッチ」コメディならもっとコメディだ!という色が強くてもよいのでは。とはいえ、かちっとまとまった、見やすい作品でした。
「大晦日」小劇場っぽい、コメディ&シリアス、前向きな作品。個人的には嫌いではないですが、終わり方が予定調和的だった気もします。
「凍て月の向こうに」殺風景な部屋の中にほのかに見える月明かり。決して多くは語られないけれど、背景が透けて見えるのが素敵な作品でした。
「母を泣かせる」タイトルからシリアスかと思えばコメディ。バツイチお母さんのセリフと演技が抜群に面白かったですね。
「春になればね」なかなかに深い作品。首つり紐の吊り位置をベットの真上にしたのも秀逸。役者・照明・舞台・そしてセリフの掛け合いが素敵な小品でした。
「だめんずホイホイはるか」コメディをやるならここまでやるべきかなと。全く教訓もなく楽しめます。最後が予定調和的なのが残念。
「ブランコ乗りが見てるもの」どこかに甘さもあるが、観客に投げかける「希望」がちゃんと見える作品。終わり方はもうすこしあっさりでも良かったかなと。
「ディメンション」この手のちょっと苦手なので、ごめんなさい。作品としては緊張感も十分ありました。
「胡蝶蘭」役者さんお二人の掛け合いが実に楽しく、最後にちょっとだけ考えさせられる。コメディでありながらちょっとだけシリアス風味ということで、個人的には大好きな作品です。
「あるいはそんな」これも、正直私にはよくわかりませんでした。狂気は伝わってきましたが…。
「夕月」プレミアムステージということで北村想氏の作・演出。こうして並べてみるとさすがだなあと。ベットの上での希望と言えばやはりこういうシチュエーションなんでしょうね。役者さんも素敵でした。
・個人的には「胡蝶蘭」「春になればね」「ブランコ乗り」「凍て月」あたりが好きでした(*^_^*)
・この公演は本当に見る側も疲れるんですが、いつも様々な発見があって楽しいです。自分が書く側に行くことはないと思いますが、これからも楽しんで観劇させていただきます。お疲れ様でした!(2015/3/1観劇)

演劇生活1年目で取り組むシェイクスピア
(ピッコロ演劇学校本科32期・舞台技術学校23期卒業公演「夏の夜の夢」感想)

・シェイクスピアの有名な作品に本科生が真正面から取り組み、それを技術学校生が見事にアシスト。面白いところも含めて、しっかり・かっちりと作られていた印象。破天荒さはあまりなかったかなとか。
・夏の夜の夢自体がそんなに真面目な話ではないので、もうちょっと突拍子もない演技なり物言いなり舞台装置なりがほしかった気も。また、大きな役の方の自分が喋っていない時の演技にはもうちょっと注意が必要。逆に住民劇団チームや妖精チームは実に生き生きしており見ている方も楽しめたり。
・舞台装置は裏表で森になったり無機質な階段に見えたりというもの。階段を白に塗ったのが膨張色となってしまい、若干アクティングの広さに負け気味の感も。裏の木の造形を作り上げたのは見事。月の吊り物は過去の卒公にはあまりない取り組みで、デザインがよく、舞台設定ともマッチしていた。
・音響・照明はきっかけが多く、やはり本科・技術学校の合同公演とすると、こういう作品が良いのかなとか。威勢がよすぎたり、逆に迷ったりが見えてしまうのは致し方ないところかなと。とはいえ、1年弱でこれだけの作品に関わるのは並大抵の努力ではなく、そこは素直にすごいなあと。
・今回は話の流れから全員での歌や本科終わりでのカーテンコールがなく、そこはちょっと寂しかった感も。とはいえ、一定以上の作品をみんなで作り上げた感はしっかりと伝わってきました。本科から研究科に行く人も年々増加し、これがゴールというよりはこれが出発点。次なる飛躍も期待しています(2015/3/7観劇その1)

この町に、おはようの挨拶を。
(ピッコロ演劇学校研究科31期「おはよう、グローヴァーズ・コーナーズ」感想)

・潤色とはいえ、登場人物が増えたぐらいで、ワイルダーの「わが町」をほぼ忠実に再現。その場で淡々と生きている人間のドラマが、1場1場とゆっくりと心にしみわたっていく。研究科の高い能力があってこその作品。
・ある意味演劇の原点的な作品だが、それを卒業公演にあえて持ってきたというところが、まずもってすごいなあと。そして、その世界を作り切った研究科生も立派。舞台監督役の方が見事に当たり役で目だったものの、他の方々もそれぞれにしっかりと、ごく普通にその役を生きていた気がする。
・個人的には簡素な中にもしっかりとした主張のある渡辺舞氏らしい舞台美術が素晴らしかったなと。登場人物(数)と作品内容、そしてアクティングやプロセミアムと舞台装置とのバランスが、さすがプロの技。派手ではないものの、空舞台の中にあらわれた装置群はなかなか圧巻であった。
・これまでこの町で生きて死んでいった人々に思いを馳せるとともに、自分もその一員として、また明日から始まる1日をしっかりと生きていく。そんな静かな決意が感じられたり。そういう意味で「おはよう、グローヴァーズ・コーナーズ」という題名は秀逸だったと思います。お疲れ様でした!(2015/3/7観劇その2)

安心品質の感動ハートフルコメディ
(劇団太陽マジック「ウェディングドレス2015」感想)

・西条みつとし氏らしいハートフルなドタバタコメディ。時間や場所が行ったり来たりで分かりやすい構成ではないのだが、だからこそ観客も一緒になってドタバタ感や謎解き感も味わえたり。最後はやはり感動で終わる安心の品質。
・序盤、登場人物の心の声が聞こえるというメタルールのもとに話が進んでいくのかなと思いきや、最初の何シーンかだけで終わってしまったのは多少意味不明。あと、途中の祈祷のシーンで使われた豆がずっと舞台にあるのが気になってしまった。が、細かいことは別にしてパワーで十分楽しめた。
・役者さんとしてはやはりヒロインの広澤草さんが本当に素敵。映画やドラマでも活躍中の女優さんだそうで、それも見てみたいなあと。また、お父さんの猪股俊明さんは本当に気難しい役を見事に演じていたし、ストーリーテラーの諏訪井モニカさんもとてもいい雰囲気で話を回しておられたなと。
・この太陽マジックという劇団、東京でたまたま知人に紹介されて観に行ったものの、なかなか自分の好みと合っており、なぜか私の上京の機会とあうことも多く、これで3回連続の観劇。これからも機会があれば見ていきたいなと思っていますので、素敵な作品を届けてくださいね。 (2015/3/14観劇)

見る人によってとらえ方が違う童話
(E.S.C(e-stage.com)ミュージカル「幸せの王子」感想)

・オスカーワイルドの作品をミュージカル化。どちらかといえば子供向きかなと思いきや、お客さんもむしろ大人の方が多く、原作よりはほんの少し深みのある設定に。ダンス、特に群集系のダンスが素晴らしく、力強さが際立った。
・やはり王子役の元宝塚・嘉月絵里さんは圧倒的な存在感。また、相手役・つばめのピーネ役の椿悠さんもなかなか素敵な役回りであった。この二人を中心に他の人々もそれぞれにインパクトがあり、天使役のお二人やトム役の男の子が印象に残る。群衆らしい群衆を作れるのは演出家の技量か。
・一方、ダンスで明らかに振りが合っていないところが散見されたのは残念。さらに、照明以外の技術ワークに私でもわかる致命的なミスが目立ったのは、正直きつい。お話の流れ上、紗幕を使う機会が多くなるのは仕方ないが、ちょっと多すぎた(それがミスを誘った)気もする。自戒を込めて。
・原作はWikipediaによると「皮肉と哀愁を秘めた象徴性の高い作品」とのことで、確かに単純な前向きハッピーエンドではなく、持てる者が憐憫の情だけで持てない一部の者を救う(そのために結果として第三者の命を奪う)ことが本当にいいことなのかなど、多少複雑な劇後感もあった。
・そのあたりも含め、決して子ども向きに前向き解釈で突き進まなかったのが、良かった気もするし、若干わかりにくくなったのかなとも思う。とはいえ、童話というのはそういうものなのかなとも。金曜日の夕方のミュージカルにあれだけお客さんが入ったということも含め、本当にお疲れ様でした。 (2015/3/20観劇)



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