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過去の「ほぼ演劇日記」 保管庫(2014年4月〜6月)


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車窓を眺めること、車窓となって生きること
(ピッコロ劇団オフシアター「車窓から、世界の」感想)

・都心郊外の駅を舞台に繰り広げられる、2週間前に飛び込み自殺した女子中学生3人を巡る大人たちの会話劇。モノトーンの世界の中で、決して前向きでも後ろ向きでもないのに、どこかほっとする、甘柿のような劇後感が残るのはなぜだろう。
・登場人物は「副担任」「副担任の彼氏」「PTAの副会長」「ガールスカウトの元リーダー」とどこか間接的なつながり。「3人をテーマにした同人誌書き」ですら、本当のところのつながりは怪しい。「3人をひいてしまった運転手」ですら、あくまでもつながりは一瞬でしかない。
・そんな中でも、死を前に、お互いがその思いなりコンプレックスなりを正直にぶつけていくことによってのみ、生き残った人々は前に進んでいけるのかなとも。死というのは、あくまでも生きているもののために作られた概念であり、他人の死を生かすことができるのはまさに生きている人だけなのだろう。
・「世界の車窓から」は、車内という安全快適な場所から外の景色を楽しむもの。しかし、現実社会を生きる私たちには、車窓の景色の当事者となって生きていく覚悟と決意もまた必要なのかなと。駅のホーム上の人々を線路側から眺めながら、そんなことも感じていました。
・今回やはりすごかったのは舞台装置。お芝居を演じるという点だけからいえばあの広さは必要ないものの、いつもの中ホールが全く見たことのない世界に変貌。さすが、柴田隆弘氏の作品だなあと。照明は抑え気味なものの、要所要所で非常にインパクトがあった印象。音響もこまかく駅の雰囲気を演出。
・4人ないし5人がほぼ横1列になるシーンも多いものの、決して棒立ち感がないのはさすがプロの役者さん。もし役者だったらあの技術は盗みたいなと。一瞬たりとも気を抜かずにその役でいること(女性3人は傘の持ち方ひとつ、役柄により違いました)なのかなとか。こういう作品は役者力が出ますね。
・ちなみに今年春のオフシアターは「車窓から、世界の」に引き続き、17日18日には「ピッコロ版星の王子様」。この2作品を続けてやることに何か意味があるのかないのか。どこかに共通するテーマがあるのかないのか。次はそれも楽しみに観に行こうと思います!
(2014/4/6観劇)

言葉を紡ぐ、言葉を表現する。覚悟と凄み。
(いるかHotel「木曜組曲」感想)

・2年前に上演して評価の高かった同作を、若干キャストを入れ替えて再演。伊藤熹朔賞奨励賞をとった堀容子さんの舞台美術もパワーアップして再現。言葉と物語を紡ぐことの凄みが、初演に比べさらに強調された作品となっていた。
・私自身が何度も見ているからかもしれないけれど、謎解き要素やストーリーよりも、登場人物それぞれのコンプレックスや思いを表出していった印象。畳みかけるようなアップテンポではなく、緩急つけながら徐々に「原稿用紙の蝶々」のクライマックスへ。再演だからこそできる余裕なのかなとも。
・役者は、やはり徳田尚美さんの観客の関心を持って行ってしまう存在感がすごかった。この作品の印象は「えい子」次第なのかなとか。初演から安定した演技の岸原さん・渡辺さん・生田さんに、若くて元気な中村さん・山田さんも加わって、演出家も遊びがいのある作品だったのかもしれない。
・KAVCでこんなことができるんだ…という感じの客席配置。座った場所によって印象が違うようで、違う席からも見てみたかったなと。美術はさすがで、椅子の色と飾り棚のキャベツ(生野菜)がモノトーン風の舞台に非常にいいアクセント。照明や音響も奇をてらうことなく、でもきっかけは多かったり。
・ある意味、「いるかhotelの木曜組曲」の形は完全に出来上がった感もあるので、次回再再演(あるのか)の際には、全然違った舞台や空気、キャストでやってみてほしいなあと。単なる1ファン的な感想で恐縮ですが(^_^;)
・夜の飲み会でのお話も合わせて、言葉や物語を紡ぐ人、そして、それを表現する人の凄みと覚悟を散々に感じさせられた作品でもありました。さて、自分は何がしたいのか、何ができるのか、そしてそもそも、何かをすべきなのか。そんなことも改めて突きつけられた「木曜組曲」再演だったのです。
(2014/4/12観劇(お手伝い))

不条理でキラキラとしたこの世界
(ピッコロ劇団「ピッコロ版・星の王子さま」感想)

・「ファミリーシアター」と銘打つ児童劇もこなす県立劇団ならではの演目。とはいえ、逆にファミリー劇場ではできない小劇場的表現に全力で取り組んだという点で、実にピッコロ劇団らしく、またその枠を超えた、創立20周年にふさわしい作品であった。
・たとえば「王子様は悲しそうな顔をしました」とナレーター役がしゃべり、その表情を王子様がする。実に児童劇的な手法。しかし、俳優として本気でその感情を一切の過剰さなく表現する。このギャップが強烈なインパクトを観客に与える。訓練され切った役者を使っているからこそできる芸当。
・見ていて思ったのだが、この「星の王子様」という作品は素敵でキラキラしたお話に見えて、実はなかなか不条理な世界観も提示しているのではないか。そして、子どものほうがその不条理な世界をそのままに受け入れているのかもしれない。最後にも提示される、ゾウを飲み込んだうわばみが印象的。
・今回も野秋裕香さんのキュートな魅力に取りつかれたが、今井さんのバラ、山田さんのパイロット、そして変幻自在の吉村さんと、芸達者な役者さんたちの本気の遊びが実に楽しかった。さらにすごかったのは役になり切っての生歌&ダンスで、ピッコロ劇団の面目躍如といったところ。
・これまでピッコロのオフシアターといえば大人向けの作品ばかりだったが、今回のようなファミリー劇場のオフシアターというのも、違った意味でとても新鮮であった。次年度以降もぜひ続けてほしいと思うとともに、これを実際に見ることのできた子どもたちは本当に幸せだなとも、強く感じたのです。
(2014/4/17観劇)

大人の本気の遊びに圧倒
(baghdad cafe’「リターン☆プラネット on stage」感想)

・劇場に入った時から、客電は蛍光灯、パンチなどを置いた倉庫は丸見えだし、舞台装置もみな後ろ向きで衣裳がつってある。ここまでやられると、これから何が始まるんだろうか…という期待感がいやおうなしに高まる。
・内容はとにかくごった煮で、決して真面目なストーリーではないものの、それぞれにレベルが高く、全く飽きさせない。2時間近い作品だったがあっという間。(1時間45分ぐらいで「そろそろ締めないと」というセリフがあり、それで初めて気づいた。)一言でいうと、インドのボリウッド映画的演劇。
・歌ではやはり「時代劇〜」の曲がインパクト高すぎ。このシーンの映像とのコラボも見事だった。真面目なシーンはきちっとこなすのに、急におふざけになったりと、緩急つけすぎ。そんな中、まるバグの良心のごとく、常識的な動きをしたヒロイン・☆子さんもまた印象的だった。
・バグダッドカフェというと難しい言葉遊びや観念的な作品という印象があり、「サヨナラ」とか大好きだけど、自分の心がしんどいときにはちょっと…と感じてきたところも。ところが今回は全然違う雰囲気で、でも、その場その場でしっかりと前に向かって歩んでいるのはやはりバグの作品だなあと。
・これが一種のお祭り・祝祭なのか、あるいは路線変更なのかはわからないけれど、いずれにせよ楽しい時間を過ごせたのも事実。次の作品にも期待なのです。
(2014/4/19観劇)

劇場とデパートと怪人と
(スクエア「アベノ座の怪人たち」感想)

・デパートの中の劇場「近鉄アート館」の復活という現実の出来事に、劇場の地下に怪人が棲んでいる「オペラ座の怪人」モチーフを組み合わせ、ひたすら笑わせてくれて、でもほろっともさせてくれる。劇場と演劇と人間に対する愛情につい心を打たれる。
・ 劇場もデパートも、それぞれに技能を持った人々が、持ち場ごとにプロとしての役割を果たしながら、有機的に一つのものとして動いていく。そこには数多くの思いとドラマがあり、それが高じた時、「怪人」が生まれるのかもしれないなと。そんなことも感じながらの観劇であった。
・と真面目なことを除いても面白く、特に客演の是常裕美氏が強烈なインパクトと見事なつなぎであった。他の怪人たちもそれぞれ魅力的であり、あまりに多彩すぎるので多少話がとびとびになったきらいはあるものの、それもまた劇場とデパートに住む怪人たちの多様性を表しているのかもしれない。
・ 舞台美術は三面客席(?)をうまく使っており、ダクトが絡み合っているもの。これもデパートのバックヤードや劇場の舞台裏を彷彿とさせ、またそれを支えてきている人々やその思いを象徴しているのかなと。決して派手ではないが、役者が立って輝きを増す美術であったと感じた。
・スクエアは長年なぜか相性が悪く、見に行くチャンスがなかったのだが、流行に走らないギャグとどこかハートウォーミングなお話は自分の好みでもあり、もっと早くに見ておくべきだったなと。誘っていただいた吉沢紗那さんにも感謝(彼女はそのままな感じでしたが)。次回作も楽しみにしています!
(2014/5/10観劇)

自分の決断と人生を愛せるか
(劇団太陽マジック「センチュリープラント。」感想)

・歌手になる夢、結婚する夢、そして子供を産む夢を、認知症になった父親や心を病んだ妹の世話ですべて諦めてきた女性。もし、人生の選択が違う方向であれば…誰もが考えることをある意味残酷なまでに提示。ただ、ラストは怒涛のハッピーエンド展開。
・ 確かにご都合主義の台本といえばご都合主義。だけど、ある意味、人生ってこんなもんかもしれないなあと。諦めたものがさくっと手に入ったり、逆にそれで何か新しい道が開けたり。結局は、与えられた条件の中で、いかに自分が選んできた人生を愛せるのかなのかなとか。そんなことも感じました。
・主演の良美を演じる広澤草さんは笑ったり泣いたり怒ったり踊ったりと、すさまじいほどの場面切り替えを見事に演じきっていた。そして、妹役の土屋史子さんの優等生ぶりとその後の壊れぶりは、本当にどこかで実例を見ているのかなと思えるほどにリアル。周囲の役者さんも上手で、東京ならでは。
・劇団太陽マジックは、前回は単に大学時代の友人のお誘いで着いていき、今回もたまたま出張と当ったので見に行ったのだが、かなりわたし好みの作風とキャスティングだなあと。逆にいうと、ある意味誤解を恐れずに、こんなにストレートに前向きなメッセージを打ち出す劇団が関西にないのが正直残念。
・ともあれ、安定の感動とちょっとした人生に対する考察を、ソフトに与えてくれる「劇団太陽マジック」。東京本拠地で見に行きにくくはあるのですが、ぜひ次の作品も見てみたいなと思ってしまっているのです(*^_^*)
(2014/5/24観劇)

不思議な劇後感があった作品
(伊藤えん魔プロデュース「コロニー」感想)

・近鉄アート館再開記念作品の一つ。関西・関東の小劇場界の名役者を数多く配し、舞台セットも衣裳もギャグも凝りまくったたいへん豪華な作品。いくつかの人間関係が交差しつつ、それでも一つの世界を強引に作り上げてしまうのは伊藤えん魔氏のならではの強引さと愛のある実力か。
・とにかく一人一人の役者さん(場合によってはアンサンブルキャストの人にまで)の背景が見え隠れしていて、それをきちっと描いているところがすごい。並の作者や演出家や役者がこれをやれば時として崩壊するが、そこは全く感じなかった。美津乃あわ氏・七味まゆ味氏の力もすごい。
・個人的に押しメンのイトウエリさんは相変わらずコケイッシュな不思議ちゃんぶりをいかんなく発揮。ラストシーンの美しい姿も見事。そして、大西千保さんが相変わらずインパクトの残る役柄を好演。戦士たちが女性なのもあり、やはり女性の活躍が光った。
・伊藤えん魔氏の作品には独特な密度があり、それがしんどい時もあるのだが、今回の作品はそのしんどさ・濃密さ・濃厚さまでが観客にとっては快感な部分があった。また心の体力をつけてぜひ見に行ってみたいなと思っています。
(2014/6/1観劇)

安定感のあるキャラメル作品
(演劇集団キャラメルボックス「鍵泥棒のメソッド」感想)

・毎年、律儀なまでに神戸に来てくれるキャラメルボックスさんの最新作。今回も原作もの。まあ、最近のオリジナル作品には若干裏切られ続けている感もあるので、その流れでいいのかなとか。
・基本的には「取り違えもの」で、定番の笑いだけどそれをきちっと楽しく見せてくれるのも技の一つかなと。ただ、あまりにも安定しすぎていて、強烈な何かが感じられなかったのも事実。生の舞台ならではのガツンとしたものが感じられなかったのは2階席から見ていたからだけではないはず。
・原作が映画、それをある程度忠実に再現したとのことで、やはりそのあたりがちょっと違った印象を与えたのかなとか。もちろん、前の列に座っていた女子高生たちには大うけ、ネット上の事前評価もかなり高かったので、こういった作品が受ける素地はどこかにあるのかも。自分が時代について言っていないだけなのかも。
・鍵穴を形どったかなり思い切った舞台装置が、この作品のどこか現実離れした世界観とよくあっていた気も。照明・音楽は相変わらずのハイクオリティで、そのあたりも安心してみてしまうところなのかなとか。いずれにせよ、いつまでも神戸に来てほしい劇団の一つであることは間違いないのです。
(2014/6/5観劇)

何かに流されている感じのする今だからこそ
(ピッコロ劇団「海賊、森を走ればそれは?…… ―九鬼一族流史―」感想)

・海に生きた海賊たちが森の中で繰り広げなければならなかった殺し合い…。歴史と運命に翻弄されながらも、翻弄されている(されざるを得ない)自分達を見つめる冷静な目と、それを俯瞰するどこか温かい視線を感じた。
・逆に何でも「ググる」ことによってわかってしまった気になる現代のほうが、大きな流れに翻弄されやすいのかなとか、ちょっと考えてみたり。そういう意味では時代劇でありながら、やはりテーマは現代劇なのかなとか。何とでもとれるところが、名作たるゆえんなのかもしれないが。
・役者さんで特に気になったのが吉村祐樹さんと岡田力さんで、劇団で中堅どころの役者さんたちがしっかりとした演技をするからこそ、主役級の人もきちっと主役らしい演技ができるし、若い人も空気に乗りやすいのかなとか。そういう意味での劇団力も感じた。
・また、舞台美術は本当にすごかった。丸太をイメージしていると思うが、照明とも相まってまるで海の中で静かに佇む沈木のようにも見えた。圧巻はこの巨大な装置が動き回るラストの殺陣のシーンで、役者の演技と道具の演技が見事にマッチ。こんなのをまたやってみたいなという気にさせられたり。
・最近、ピッコロ劇団にせよ演劇学校・舞台技術学校にせよ、明らかに上げ潮傾向な気も。こういう波には乗れるだけ乗って、さらなる高みを目指していただきたいなと、一ファンとしては痛切に願う次第です。次回作も楽しみにしております!
(2014/6/7観劇)

ストレートプレイとオペラと
(みやこオペラ京都「蝶々夫人」感想)

・基本的なストーリーは知っていたものの、シッカリと生で見たのはおそらく初めてかも(なんとなく既視感があったのは多分「ミス・サイゴン」のせい)。オペラというと高尚なイメージがあるが、基本的には人情物であり、物語としても十分面白かった。
・もちろん、お話が面白いのは、蝶々さんをはじめとする歌い手の皆さんの歌と演技力があってこそ。イタリア語&字幕でこんなに感情が表現でき、観客に伝わるのだなあと。ミュージカルとはまた違った表現様式がありながらも、ストレートプレイとの共通項も感じ、それも非常に印象深かった。
・気に入ったのは、第1幕の蝶々さんが出てくるシーン。久々にぞくぞくさせてもらった。あとは1幕終わりの二人の距離感が縮まっていくデュエット、さすがの名曲「ある晴れた日に」など。第2幕は蝶々さんのお茶目さも見どころで、それが少しずつ悲劇につながっていくところも印象深かった
。 ・舞台装置は簡素ながらも必要十分。1幕終わりの夜のシーンであえて青白い提灯を、それも吊りと置きで持ってくるセンスは素晴らしい。残念だったのはプランターで、もうちょっとこだわってほしかったところ。既存のプランターの周りに薄い木の板を貼っただけでもずいぶん違ったと思うが…。
・そして、素晴らしかったのがピアノ演奏&コレペティトアの西尾麻貴さんで、「ピアノ伴奏のオペラってどんなんかな」という不安を完全に解消してくれた。後半などは2幕3幕ぶっ通し(1時間半以上)での情熱的な演奏であり、体力的にもすごいなあと。音楽としても十分楽しめた。
・蝶々さん役だった小梶史絵さんの歌唱能力はもとより演技能力の高さにも目を奪われた2時間半。今度は(多少もったいないと思いつつも)、ぜひストレートプレイの演技を見てみたいなあと。夫婦二人芝居などいかがでしょうか?ともあれ、本当にお疲れ様でした&ありがとうございました。
(2014/6/15観劇)

風は確かに吹いている、今も。
(佐藤太一郎企画その8「風のピンチヒッター'14」感想)

・伝説上の存在となりつつあるランニングシアターダッシュの代表作。劇団名どおり走りまくり、スポ根ドラマ風のある意味ステレオタイプなストーリー。だけど、それを役者が本当に自分のものとして演じているのが客席に伝わる。
・全員での群読、タイトルを一字ずつ持たせる手法、効果音を使った場面切り替え、ムービングライトとスモークの多用、ステレオタイプなほどかわいい女の子とかっこいい男の子、そして役者さんたちの本気の汗と涙…ダッシュの要素があまりにも詰め込まれていて、正直涙を禁じ得なかった。
・「風はいつも吹いている」「あの夏があったからこそ今自分はここに立っていられる」「さあ、野球をしよう」…ここでいう「野球」は、音楽であったり美術であったり仕事であったり演劇であったりするのだろう。たとえ今離れていたとしても、風はどこかに吹いていて、必ずそれは生きている。
・私がこの作品を見たのは2001年のアイホール。それから13年、いろんなことがあり、演劇は一度諦め、再チャレンジし、また諸事情で(作る方は)諦めつつある。だけども、その時その時の思い出が今の自分を形作っているのは間違いないし、また違う形で戻るときもあるのかなとか。
・役者さんはそれぞれに素敵であったが、本当に座組としての仲の良さがメインキャストだけでなくアンサンブルの人も含めてじんわりと伝わってきて、それがさらにこの作品を良いものに仕上げていた。個人的には春野恵子さんがとても素敵だったなと。往年の佐久間京子さんを彷彿とさせた。
・ランニングシアターダッシュは私の観劇の原点であり、その世界観と空気を忠実に、さらに純粋な形で表現してくれた佐藤太一郎氏と大塚雅史氏には本当に感謝。そして大阪にもう一度、こういう前向きなお芝居に全力で取り組んでくれる劇団ができてほしいなあと心から願ってもいるのです。
(2014/6/28観劇)

生を紡いでいくことへの諦念と決意
(桃園会「覚めてる間は夢を見ない」感想)

・正直、私には難しすぎる作品であった。1作目までは謎解きに頭を悩ませていたが、2作目でどうでもよくなり、単に流れてくるセリフと演技を追っていた。そこで、何か壮絶な思いというか諦念というか決意というかが、逆にストレートに入ってきた気がする。
・阪神・淡路大震災(1.17)と東日本大震災(3.11)をつないで、その合間で精神に異常(?)をきたした「私」が主人公。2作品目から3作品目にかけての「猫」(自由奔放さを意味しているのかもしれない)との、生と死、そして生を紡いでいくことの意味についてのやり取りが強烈。
・私たちは2つの震災で生きることと死ぬことの意味を強烈に突きつけられた。しかし今、それは忘却のかなたにある。でも、状況は何一つ変わっていない。もちろんこの作品も何の解決策も与えない。けれど、人と人とを結び付ける青い毛糸に強烈な愛おしさと諦念と決意とを感じずにはいられなかった。
・役者さんとしては猫役の阪田愛子さんがすごくインパクトのある演技だった。当日チラシのコメントも秀逸。また池田ともゆきさんの舞台美術にはまたしても圧倒された。最後チョークで落書きとは…。桃園会の世界を知りながら、その流れに乗りつつ、あえて壊した感もあり、すごいなあと。
・桃園会は以前友人から「あなたはあまり好きではないかもしれない」 と言われたこともあり、私の理解能力を若干超えてはいるものの、演じられる世界観や感情は本物なので、劇後感が決して嫌ではないのです。それなりに頭の体力も使う作品ではありますが、また機会があれば見たいなと思います。(2014/6/29観劇)



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